杏林大学医学部付属病院 脚の壊疽「重症下肢虚血」 切断から守る旗手

★杏林大学医学部付属病院・形成外科

2015.10.28


杏林大学医学部付属病院【拡大】

 糖尿病の合併症のひとつ神経障害では、痛みを感じにくく脚への血流が悪いことで、小さなキズから感染が広がり、壊疽(えそ)を引き起こすことがある。このような脚への血流が極端に悪い状態を「重症下肢虚血(かしきょけつ)」という。

 かつて壊疽を起こした脚は切断するしかなかったが、近年、治療の進歩で切断を避けられるケースも増えてきた。しかし、一般的に重症下肢虚血の認知度は低く、専門の診療科も乏しい。また、早期発見や治療後のリハビリなどを行うには、包括的な医療の提供が不可欠だ。

 この体制づくりを全国展開すべく、旗手として活動しているのが、杏林大学医学部付属病院形成外科。

 「重症下肢虚血によって、脚を切断してしまうと予後は非常に悪くなります。脚を守るには、内科や外科などのたくさんの診療科や看護師、地域社会などの連携が不可欠です。当院ではその仕組みができていますが、全国的に広げたいのです」

 こう話す同科の大浦紀彦教授(52)は、下肢を残す治療のスペシャリストで、日本下肢救済・足病学会の理事を務める。昨年には、一般の人や医療従事者向けの情報発信組織「AAA(足を守る情報発信サイト)」を設立した。

 「当科のデータでは、足病変を持つ患者さんは、糖尿病と人工透析を受けている方が大半となっています。しかし、糖尿病で重症下肢虚血になる知識を持っている方は少ないのです。また、糖尿病を治療している内科の医師も、足病変を見つけたときに、どの診療科へ紹介すればよいのか戸惑うことがあります。AAAによって現状をより良くしたいのです」

 90年代、床ずれといわれる褥瘡(じょくそう)は、全国的に介護も含めた病院内外で問題となっていた。看護師や家族が患者を寝返りさせても、床ずれは起こる。そこでチーム医療の重要性が認識され、厚労省の後押しやエアマットなど産業界の参入により、現在褥瘡になる患者は1%以下にまで減少したという。大浦教授は、褥瘡のような体制を足病変でもつくりたいと考えている。

 「一般の方も含めた多くの知恵が集まることで、下肢切断を防ぐことができると思っています」

 現在、その流れは大きくなりつつある。日本下肢救済足病学会が中心となり、5つの学会が脚を救うべく立ち上がった。医師でもある秋野公造参議院議員(公明党)の働きかけもあって、今年6月に閣議決定された経済財政運営の基本方針、いわゆる「骨太の方針」に、生活習慣病の「合併症予防を含む重症化予防」という文言が初めて盛り込まれた。国が取り組むべき課題として下肢救済を推進していくことが明確になったのだ。厚労省が褥瘡体制を後押ししたように、下肢救済でも体制づくりに光が見え始めている。

 「医療機関だけでなく社会との連携も構築できれば、全国の患者さんを救うことになります。時間はかかると思いますが、システムができるように努力します」と大浦教授は話す。下肢切断を防ぎ、予後改善のために尽力中だ。 (安達純子)

【データ】2014年実績
(形成外科・美容外科)
・入院手術 1258例
・外来手術 647例
・重症下肢虚血 121例
・褥瘡手術 25例
・病院病床数1153床
〔住所〕〒181−8611 東京都三鷹市新川6の20の2 電話/0422・47・5511

 

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