【最新「死に方」事典】「腹七分目」が長寿の秘訣か

2014.12.28


南雲吉則氏【拡大】

 最近、「空腹の状態のほうが体にとってよい。長生きもできる」ということが、よく言われるようになった。そのせいか、1日3食をやめて2食にする人が増えている。また、医師の南雲吉則氏は、1日1食生活を実践しており、『「空腹」が人を健康にする』(サンマーク出版)という本まで書いている。

 では、本当に空腹が人を健康にするのだろうか?

 「空腹=健康、長生き」論の根拠は、長寿遺伝子とされるサーチュイン遺伝子の働きにある。サーチュイン遺伝子は、体内の細胞内にある遺伝子をすべてスキャンし、壊れたり傷ついていたりする遺伝子を修復する能力を持っている。また、細胞中のミトコンドリアを活性化させて、エネルギー効率を高める働きをする。まさに、スーパー遺伝子と言っていい。

 ところが、このスーパー遺伝子は、おなかがいっぱいだと働かない。休眠状態になってしまう。その結果、老化が進行する。しかし、おなかが減ってくると急に目覚めて活動を始めるので、空腹状態を保つほど健康で長生きできるというわけなのである。

 サーチュイン遺伝子は、生物が進化するプロセスで、飢餓対策として生まれたものと考えられている。100歳以上の長寿者を調べたら、おしなべて小食で、若い頃からサーチュイン遺伝子の働きが活発だったという報告もある。

 そこで、食事の量を少なくする。つまり、1日に摂取するカロリーを少なくすることで健康を保つという「カロリー制限健康法」が、世界で提唱されるようになった。つまり、摂取カロリーを制限すれば、サーチュイン遺伝子がよりよく働いてくれるというのだ。

 アメリカでは、「カロリー制限委員会」という組織も誕生している。この会員は、成人男性が1日に必要なカロリー摂取量の約7割に抑える生活を実践している。

 日本でも、カロリー制限をしている人は多い。日本の成人男性の摂取カロリーの目安は2000±200カロリーとされるので、この量の7割を取るとすると、1日1400±140カロリーとなる。食事で摂取するカロリーをこの範囲で抑えると、健康で長生きできるというわけだ。

 じつは、カロリーを制限すると寿命が伸びることは、1930年代にラットの実験結果で判明していた。その後も、ハエやサルなどの調査研究でも確認された。しかし、そのメカニズムについては長い間不明だった。

 ところが2000年、アメリカのマサチューセッツ工科大の研究グループが、サーチュイン遺伝子の働きが、その一因であるということを突き止めた。つまり、まだ判明して10年余りしかたっていないのだが、この10年余りで、世界中でカロリー制限運動が起こり、1日2食派が増えた。

 ただし、適切とされるカロリー摂取量の5割を切ると、かえって寿命は縮むという研究結果がある。空腹といっても、徹底してやるのはよくない。

 理想的なのは1日2食にして適切量の7割を取り、空腹時間を長くすること。たとえば、夕食は夜8時までに取り、翌朝まで絶食時間を長くする。こうすると、夜寝ている間にもサーチュイン遺伝子が働いてくれる。

 まさに、「睡眠は百薬の長」「腹八分」という昔からの言い伝えは、間違っていなかったのだ。

 ■富家孝(ふけたかし) 医師・ジャーナリスト。1947年大阪生まれ。1972年慈恵医大卒。著書「医者しか知らない危険な話」(文芸春秋)ほか60冊以上。

 

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