これから少しずつ日が長くなってくるとはいえ、まだまだ朝は暗い。そんな「日の短さ」は、意外に人の体、特にメンタルな部分にダメージを与えている。重要なのは「体内リズム」。1日のサイクルを正しく保つことが、ストレスからの脱却の大前提なのだ。
冬のYさん(50)は、表情が暗い。顔色は悪く、会話も少ない。一見「鬱(うつ)病」に見える。
そんな彼も春になれば明るくなり、ニヤニヤしながら女性社員に近づき、セクハラまがいの冗談を飛ばして嫌われる。冬眠から目覚めた熊のようだ。
「“冬の鬱”でしょう。朝食抜きで早朝出勤する人に多く見られます」と語るのは、東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長。そのメカニズムをこう語る。
「冬の早朝は日光を十分に浴びられないので、セロトニンという“やる気ホルモン”が不足し、気力がうせて集中力も下がる。昼間でも眠くなってしまうのです」
セロトニン不足は夜にも影響を及ぼす。セロトニンから分泌されるメラトニンという睡眠ホルモンが十分に出ないため、寝つきが悪くなるのだ。
結果として翌朝も睡眠不足となる。体内リズムが狂った状態が続くことで、鬱症状も続いていく。
この悪循環を断ち切るには「余裕を持った朝の行動と、朝食が重要」と片平院長はいう。
「朝は5分でいいから日を浴びて(曇りでもOK)、セロトニンの元となるトリプトファンを含むたまご、納豆、バナナ、ヨーグルトなどを食べるといい。特にリズミカルにかむことが、セロトニンの合成を促進させるといわれています」
片平院長によれば、朝しっかりセロトニンが合成されれば、その日の夜にはメラトニンが分泌されるので、自然に眠くなるとのこと。
「かみ合わせの不調からストレス症状を引き起こして歯科医院を訪れる人は多いけれど、かみ合わせ治療の他にも食事や睡眠の問題も視野に入れた診療が重要です」と片平院長はいう。
春の訪れを待つ前に、朝はバナナを食べましょう。よくかんでね。 (長田昭二)
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