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【当てちゃる券】競輪選手にとっての“サードマン”は…

 11日は18年前、米国の同時多発テロが起こった日だ。あのビル内にいて助かった男性の興味深いエピソードを紹介したい。彼は高層階の非常階段で炎と煙に巻かれ、死を意識した。その時、心の中に聞こえてきたある「声」のおかげで生還できたというのだ。それは知らない男の声で、「起きろ! 私に付いてきなさい。君を家まで送り届けてあげよう」と聞こえた。彼は誰かに導かれている感覚だったといっている。そんなことがあるのだろうか?

 もうひとつ似た話がある。海底洞窟を独りで調査ダイビングしていた女性学者が命綱がないことに気づいた。ライトの光以外は漆黒の闇。エアの残量は数分程度。普通なら絶望で発狂するところだ。すると亡くなったご主人の声がしたというのだ。「大丈夫だ、落ち着きなさい」

 彼女はご主人から指示された方向に進んでいくと白い命綱を発見し、無事生還できた。

 これらは“サードマン現象”といって生きるか死ぬかの局面でしばしば現れる。脳科学者は脳が緊急モードになり、冷静さを取り戻すために“第三者”を登場させるというのだが、正確な命綱の位置までどうやって分かるのか説明がつかない。

 極限の緊張状態といえば選手もそうだ。

 レース前「落ち着け」「勇気出せ」「お前ならやれる」。

 そんな言葉を頭の中で反芻(はんすう)し、弱気な自分を打ち消す。これって第三者からの言葉だ。腹をくくって敢闘門から一歩出た瞬間、正気に戻る。「ごらぁ~、どアホッ、ボケッ、カス、ゴキブリー」

 鉄火場に引きずり出されたオレたちにとって“サードマン”の声はファンの罵声だったのかもしれない(笑)。

 平塚S級決勝(12R)はコマ切れ4分戦。山中の仕上がりが際立っており、準決勝同様、山中がまくって斉藤との直線勝負。〔5〕⇔〔1〕-〔3〕〔7〕〔9〕。

(元競輪選手)

 ■内田浩司(うちだ・こうじ) 1962年8月26日生まれの53歳。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。