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【当てちゃる券】佐世保での苦い思い出、いい思い出

 《2016年10月17日発行、夕刊フジから》

 佐世保競輪場は日本最西端の、海のそばにある風光明媚(めいび)な競輪場だ。ここは平成3年まで8車立てでレースが行われていた。なんと、準決勝の3着者3人で1人が落ちる抽選をやっていたのだ。

 私は23歳のとき、記念の準決勝で3着になってしまい、抽選で負けて最終日に順位決定戦を走ったことがある。順位決定ではまくって後続を引きちぎり、施行者から敢闘賞(2万円)までもらい特急列車に乗って帰路に着いた。

 しかし、話はこれで終わらないのだ。上機嫌で先輩と缶ビールをプシュプシュ開けて、ほろ酔い気分で小倉に着いてからの夜の計画を練っていた私は、博多で新幹線に乗り換えるために下車した。ホームの階段を下りかけたとき座席にセカンドバッグを忘れたことに気づいてフルもがきで戻ったが、ファイトマネー70万円の入ったバッグは跡形もなく消えていた。警察に届け、ゴミ箱の中まで探したが何も出てこなかった…。すっかりシラフになって帰宅したアホな私の悲しい思い出である。

 しかし、いい思い出もあった。一昨年、FIIの一般戦。逃げ不在のメンバーだったが、意表を突いてジャン過ぎで先行態勢に入った最年長の私は、後ろをキッチリ競らせる“ズンタッタ先行”で逃げ切った。何より52歳の先行にファンや、出迎えてくれた同僚たちが喜んでくれたことがとてもうれしかった。私は思い出のたくさん詰まった佐世保競輪をこれからも応援していきたいと思う。

(元競輪選手)

 ■内田浩司(うちだ・こうじ)1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡県65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。

 ※原則として新聞掲載時のまま再録していますが、一部加筆・修正を行っています。