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【当てちゃる券】職人の魂が織りなすドラマ 久留米ナイターS級決勝11R 津村のカマし、まくり

 陸上界を席巻しているナイキ社が開発したピンクの厚底シューズは、「靴底に入れたカーボン(炭素繊維)の反発力があるから規制せよ」との意見がある。

 しかしだ、棒高跳びのポールだって最初は木の棒だった。それが竹になり、グラスファイバー(ガラス繊維)へ。そして軽くて強いカーボンへと進化し、記録も飛躍的に伸びた。シューズも同じような進化だと思うが、棒高跳びも今さら木の棒では跳べないし、同じ話だと思う。

 自転車競技で使用するシューズはすでにカーボン底が主流だが、規制はない。現に選手たちは国際試合でのハロン(フライング200メートル)は9秒台を叩き出す。北津留翼(福岡90期)は「タイムは金で買えます」と言っていた。シューズ以外のフレームやハンドルもカーボン製だし、車輪はディスクホイールで部品はすべて軽くて剛性のある最新モデルだ。

 オレの時代は鉄板を入れた重たい皮底やプラ底のシューズを履いていた。そのころ、全盛期の中野浩一さんが当時最先端だったイタリア製の木底のシューズをはやらせた。オレは一度使ったがまったくしなりがなく、ゲタを履いてモガいているようでやめた。

 日本の競輪はフレームや部品に関してもJKAが登録したもの以外は使えない。フレームに使うパイプはいまだに鉄製。だが、寸法はオーダーメードで、どのメーカーも腕のいい職人が一台一台溶接して作る。塗装されたフレームはどれも職人たちの魂が詰まった芸術品。量産したカーボン製とは違い“世界に一台しかない”愛着の湧くものだった。部品も昔と変わらない。世界基準のマシンはV12気筒、日本の競輪仕様は直4気筒くらいの差がある(笑)。

 当然、競輪は1F10秒台後半でもめったに出ない。それでも競輪は自転車も選手も人間ドラマがいっぱい詰まった競技なのだ。

 久留米ナイターのS級決勝(11R)。九州勢からひとり決勝に上がってきた津村は、そろそろ地元で花を咲かせたいところだ。目標のない成田が前受けからさばく。ライン3車の久保田が押さえ先行。中団争いでもつれるところを津村のカマし、まくりが決まる。

 応援車券で〔1〕⇔〔4〕-〔2〕〔5〕〔6〕〔9〕。

(元競輪選手)

■内田浩司(うちだ・こうじ)1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡県65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。競輪祭では特別コラム『小倉競輪祭 なう&リメンバー』を執筆。