記事詳細

【当てちゃる券】選手紹介のあとは必ずトイレに

<<2017年11月16日発行、夕刊フジから>>

 近頃は、女性の社会進出が進むにつれ男性が弱くなったとよく聞く。いや、もともと女は男よりかなり強い生き物だと思う。

 秘書に「違うだろ~」と激怒した元国会議員も迫力満点だったし。しかし、元勝負師のオレはそう簡単には女には屈しないと思っていたが…。この前、妻にこう言われた。

 「お父さんさ、これからはオシッコするときは座ってしてくれない。便器にはねたり、酔っ払っているときなんか飛び散って汚いのよ」

 「なにっ! 座ってションベンしろだと? んな事できるわけなかろうが。男は大昔から立ってすると決まっとるんだ。座りションだけは男の沽券(こけん)に関わるし断る」「沽券も保険もないわよ! 分かったわね?」

 妻の迫力に押され、簡単に詰まされたオレは、次の朝から座ってすることになった。洋式便器の緩斜面に流れ落ちていく尿は音もしなかった。

 そういえば現役時代、選手紹介のあとは必ずトイレに行った。レースを間近に控え、選手は誰も押し黙る。そして緊張のあまり便意をもよおす。それはビビリグソといって出し切ると緊張を和らげる効果があった。もちろん、そのときに一緒に排尿も。

 家の便器に座って用を足しながら、なんだがそれがとても懐かしかった。オレは当分の間、座って用を足すことに決めた。(元競輪選手)

■内田浩司(うちだ・こうじ)1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡県65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。競輪祭では特別コラム『小倉競輪祭 なう&リメンバー』を執筆。

※原則として新聞掲載時のまま再録していますが、一部加筆・修正を行っています。