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【真打 立川志らべ 口先先行一車】予想屋トシちゃんの魂継いで

 落語家として入門して2年目くらいの前座の頃。確定申告で年収6万円と申告した時分ですな。私は夕刊フジのナイター競輪面の紙面作りの手伝いをしていたのです。まあ、アルバイト、みたいなもので…。

 朝早く東京・大手町の編集局に行って働くのですが、そこで、青木利光さんという神奈川の予想屋さんに電話をし、その日のメインレースの予想を聞いて、原稿にまとめるという作業がありました。

 青木利光さん。神奈川の競輪ファンなら通称“トシちゃん”でおなじみでしょう。

 利光さんはこの夕刊フジのナイター競輪面で予想していたのです。そう、今、私が書いているこの欄で。

 当時、いや今でも、予想屋さんが新聞に展開や予想の目を出すなんてほとんどないことです。それだけ夕刊フジは先を行っていたんでしょう。(さりげないヨイショ)

 競輪初心者の私は、この作業でどれだけ競輪を学んだことか。

 「まくりってのは3日連続では決まりにくいんだ」

 「忘れた頃の垣外中勝哉(大阪・68期)の一発だよ」

 などなど、今でも覚えていることがたくさんあります。

 もう競輪選手生活の晩年だった滝澤正光先生に対し、「滝澤先生、明日は逃げるかもしれないよ」などと言いい、本当に逃げたときには「プロって凄え」と感心したものです。

 8月15日、仕事先の小田原競輪場からの帰りの電車内で、青木利光さんが急性心筋梗塞でお亡くなりになりました。64歳でした。

 機動型同士の穴予想が多かった利光さんになったつもりで小倉2日目の9Rを予想します。山崎のペースで、工藤の番手奪取の戦いと考え、〔3〕-〔2〕⇔〔7〕-〔5〕。

 「競輪のコラム書いてます」と言うと、見下した感じで「なーんだ、予想屋やってのかぁ」なんていう人がいます。

 予想屋さんに失礼だ。利光さんのあの記憶力と洞察力、さらにはお客さんとの駆け引き、私にはできないことだ。

 あなたの魂を感じながら、一生競輪やりますよ!

 ■立川志らべ(たてかわ・しらべ) 1975年9月3日生まれ。静岡県伊豆の国市出身。落語家。2000年に立川志らくに入門。07年に二ツ目昇進。18年10月に真打昇進。趣味は音楽鑑賞、サッカー観戦。競輪の造詣が深く、好きな選手は村上義弘(京都・73期)。本紙競輪面にコラム『真打 志らべの口先先行一車』を連載中。