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【当てちゃる券】なぜか競輪だけに存在。ラインは人生そのもの

 競輪のビギナーにラインを理解してもらうのはなかなか難しい。

 公営競技の中でなぜか競輪だけに存在し、競技規則にも載っていない。

 ラインとは競輪選手がレースにおいて便宜的に無益な争いを避けるために考えだされた秩序のようなものだとオレは思っている。

 レースは風圧を引き受ける先行屋が逃げなきゃ始まらない。先行屋以外は後ろを追走することになり、とりあえず級班や得点を基準にして必然的に序列が発生した。

 ラインには沢山のカテゴリーがあるが8ブロックに分けた地区ラインが代表的。

 よく簡単に、ラインの絆なんて言葉を口にするけれど、本当の意味での絆(例えば師弟)で結ばれたラインはそうそうあるはずがない。大抵はそのレースの損得や妥協で決まる。

 しかし、妥協しない一握りの番手勝負型の選手は自分自身の信念で奪いに行く。これも競輪だ。

 オレが思うに一番ラインを大事にしているのは南関地区。9車立で4番手まで固めるレースをたまに見る。その逆は九州地区で、4番手まで並ぶくらいなら別線を選ぶ。

 どっちがいいのかは分からないが、過去には競輪界を揺るがす大事件が起きた。

 オレも微力ながら参加していたが「九州は一つ」を旗印に長年ラインを組んでいた大物同士が日本一の先行選手の後ろを競った。

 両雄の競りを見た他地区の先輩は「恥ずかしいな」と言ったが、妥協のない本物の競輪を観せてもらったのも事実だった。

 こうしてみるとラインとは人生そのものだ。

 小倉ナイター最終日S級決勝12Rは藤根-武田が先手、4番手以内を取り切り、連夜積極的な和田真久留がまくる。

 7⇔2-135。

 一発の魅力はやはり中川誠一郎しかいない。(元競輪選手)

 ■内田浩司(うちだ・こうじ) 1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡・65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。競輪祭では特別コラム『小倉競輪祭 なう&リメンバー』を執筆。