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【当てちゃる券】全日本選抜に思う

 オレが選手になった頃の川崎競輪場は「競輪の聖地」と呼ばれていた。ファンで埋め尽くされたスタンドからは厳しいヤジが容赦なく飛んできたが、今では考えられない鉄火場の緊張感が出走選手にも伝わり否が応でも気合が入った。

 先週55年ぶりに開催されたGI(全日本選抜競輪)は地元・神奈川の郡司浩平が競輪祭に続きGIを連覇した。

 彼の勝因は愛知から静岡に移籍した深谷知広の番手を回れたことが大きい。

 ラインを主張できるポピュラーな大義名分は同地区であること。つまり深谷は中部の大砲から南関東の大砲になった。移籍理由は知らないが中部のマーク陣にとっては大きな損失だったな。

 深谷もやはりプロだった。

 「中部とのことはもう過去のことよ。ほんとよ気にしないで。これからの私は南関東のためにイッちゃうから」と移籍後初のGI決勝では郡司の指名に見事に応え、名実ともに南関東ラインの仲間入りを果たした。

 決勝進出が最低条件だったオレのイチ押し松井宏佑は地元のGIで力み過ぎたのか勝ち上がりで失敗。深谷の移籍を刺激に変えて焦らず南関の先鋒(せんぽう)としてアップデートしてほしい。

 2冠の郡司は深谷と松井の番手を手中にし、今年のG1戦線の流れを確実に引き寄せた。

 別府ナイター最終日S級決勝12Rは望月-勝瀬の先行1車。その南関東ラインに地元・菅原が番手勝負を宣言したが、オレの狙い目は山中のカマし含みの自力勝負。四国両者の〔2〕⇔〔4〕-〔1〕〔5〕〔7〕。

 千葉の117期、成清龍之介選手が公道での練習中に事故死したニュースが頭から離れない。次回は選手の練習事情について書いてみたいと思う。(元競輪選手)

 ■内田浩司(うちだ・こうじ) 1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡・65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。競輪祭では特別コラム『小倉競輪祭 なう&リメンバー』を執筆。