【酔いどれ師匠の酒場探訪】飲まない人はお断り! 酒飲みのための中華バー「十六公厘」(東京・神楽坂)

名物の腸詰(右)とピータン豆腐。なみなみ注がれた紹興酒とともに

★「十六公厘」(東京・神楽坂)

 花街らしいしっとりとした石畳の路地が印象的な東京・神楽坂。メーンの早稲田通りはいつも賑やかだが、神楽坂上で交差する大久保通りを西に進むと、落ち着いた住宅街になる。牛込神楽坂駅近くの右手、変わった名前を掲げた店がある。『十六公厘』。果たして何の店なのか。

 入り口のガラス戸の上には漢字で十六公厘、カタカナで「ジュウロクミリ」と書かれている。そして看板には《飲む人の店》という文字。こちらは飲まない人はお断り、もちろん未成年もダメで、まさに酔いどれのための店なのだ。

 「公厘」と書いて「ミリ」と読むとは知らなかったが、清代の中国での当て字だそう。知らなくて当然だが、日本の漢字表記では「粍」とのこと。これも知らなかった(笑)。で、「16ミリ」とは何のことなのか? 看板にはお勧め料理として「自家製腸詰」と書かれている。じつはこれがヒント。

 じらさずに言いましょう。腸詰は肉の塊をミンサーで挽くが、その穴が直径16ミリのものを使っているということ。かなりの粗挽きになるが、それがこちらの腸詰の特徴なのだ。この店に来て腸詰食べずに帰る人はいないというくらいの名物。ニンニク、香草、自家製甘味噌とともに供されるが、もちろんそのまま食べても非常に美味しい。

 焼売も定番だが、油淋鶏、砂肝ガーリックなど肉料理がメーン。店名と料理でわかるように、こちらは中華料理をつまみとして出すバー。一人で料理をつくるマスターの佐藤洋さんは、担々麺で有名な『希須林』で修業したが、『十六公厘』には麺類もご飯もない。あくまで「酒を飲むためのつまみを出す」というポリシーなのだ。

 ビールと腸詰という最強タッグでスタートしたら、二杯目は紹興酒ハイボール。紹興酒のソーダ割だが、これがなぜ他の店にないんだろうと思うほど美味しい。瓶出し紹興酒をお燗で頂くのもいい。

 カウンターがメーンで一人客、二人客がほとんどだが、厨房と向かい合っているので、時折マスターと話しながら料理と酒を楽しめる。そのスタイルに合わせて、料理も小皿くらいの量。毎晩ふらっと入りたくなるような店だ。

 ■東京都新宿区横寺町37エムビル1F(地下鉄牛込神楽坂駅から1分)/(電)03・6457・5632/営業18~翌1時/日曜・祝日=15~22時/不定休/予算=1人3000~4000円

 ■飯田達哉(いいだ・たつや) 1956年7月18日生まれ。スポーツ専門誌編集長を経て編集プロダクション「オフィス・トライアイ」を設立。スポーツ、酒、落語、吟剣詩舞などおもに趣味の分野の執筆・編集に携わる。著書に『日本酒日和』『三師匠 落語訪ねて江戸散歩』(ともに舵社刊)など。