【肉道場入門!】お歳暮の「肉」は牛か豚か 関東でハム等の食肉加工品が好まれる理由

年末年始は家族で肉を囲みたい

 年の瀬と言えば、お歳暮--という習慣も薄れつつあるが、それでも「暮れの元気なごあいさつ」はうれしいもの。

 もっともその中身は国内でも東西で、大きく変わる。少し古いデータだが、お歳暮商戦が活発だった十数年前に農林漁業金融公庫が調べた「お歳暮として贈った食品」で関東と関西を比較した調査がある。

 関東では1位から「食肉加工品」(21・2%)、「調味料」(19・2%)「日本酒」(14・4%)の順。

 対して関西の1位は「日本酒」(18・8%)。続く2位はともに14・1%で「精肉」「ビール」が入っている。

 どちらにも「肉」は入っているが、関東1位の「食肉加工品」と、関西2位の「精肉」に東西の肉食文化の違いが如実に現れている。

 まずは「豚」と「牛」の違いである。総務省の家計調査で、全国の主要都市における牛と豚の消費量を見てみると、東では豚の消費が多く、西では牛の消費が多い。その境界線は琵琶湖(滋賀県)の東岸あたり。

 実際、あの「天下分け目の」関ヶ原町(岐阜県)が2016年に行った調査でも牛食と豚食の境目を岐阜県と滋賀県の県境と推定している。

 豚・牛といった素材の違いだけではない。関東ではハム・ソーセージ等の食肉加工品が好まれる。手軽に食べられることに加えて、日持ちもいい。正月に里帰りする人も多い東京にうってつけの贈答品だ。

 一方、関西の牛肉といえば、言わずもがなのすき焼きである。古くは幕末の安政年間(1855~1860年)に、福沢諭吉が「大坂には、牛鍋を食べさせる店が二軒ある」と記したように関西での牛肉人気は並々ならぬものがある。

 とりわけ年末年始のすき焼きを焼くときには、家長である父親がここぞとばかりにその威光を発揮する家も多い。鍋奉行と化した父親は全員が着座するまで、決して肉を焼き始めない。焼いた肉も一枚一枚家族に取り分け、家族もまたうやうやしく肉を受け取る-。

 昭和の頃にはよく見られたそんな光景も最近では少なくなったという。だが、年に一度くらい、家族全員が背筋を伸ばす機会があるのも悪くはない。みなさま、どうぞよいお年を。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「大人の肉ドリル」に続く新著「新しい卵ドリル」が好評発売中。