主婦もハマる「ソフト闇金」 狡猾な業者の狙いとは

提供:NEWSポストセブン 
ソフト闇金業者の狙いとは

 フリマアプリで現金が出品されていた問題が浮上したとき、現金を「購入」する人がいることに驚かされた。だが現実は、お金が足りずに困る人たちが水面下で増え続けている。お金がない悩みは、人に言いづらい。それにつけ込んで、優しい顔で借金地獄に誘い込もうとするソフト闇金にハマる人たちと、業者側の狙いについて、ライターの森鷹久氏がリポートする。

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 --弊社は高圧的な取り立て、催促のない”ソフト闇金”です……。

 「闇金」と言えば、法外な利息で金を貸し付ける無届け無登録の金融業者であることは広く知られており、取り立ても執拗かつ悪質で、時には人間一人の人生が崩壊するまで追い込むこともある。また、闇金のほとんどには暴力団などの反社会勢力が関与しているとされる。

 一方、ネットで検索すると無数に出てくる”ソフト闇金”を自称する業者のホームページを覗いてみると、とても反社会勢力が関与しているとは思えない、冒頭のようなソフトな文言が並んでいる。フリー素材サイトから引っ張ってきたと思われる笑顔の女性の写真が多用され、確かに「ソフト」な印象さえある。

 さらに、一般的な闇金よりも安い金利で貸し付ける、とするところがほとんどというのも、ソフト闇金の特徴だ。しかしながら、怖い”闇金”に”ソフト”が付け加えられても、怪しさは変わらず、一般人にはピンとこないし、はっきり言って何が起きているのか、見当もつかない。実際に「ソフト闇金」を利用しているという花村さん(仮名・47歳)は、その存在を”ありがたい”と話す。

 「私は”ブラック”で、クレカはおろか携帯電話すらまともには契約できない状態。月末など物入りの時にはよく利用する。精神的な苦痛がなく、とてもありがたいのです」

 花村さんは趣味のギャンブルなどで作った借金千数百万円を踏み倒し、クレカの契約やローンなどの組めない”ブラック”状態にある。そんな花村さんが金を借りられるのは、闇金など無届けの違法業者だけ。以前はよく「闇金」を利用していたが、現在は月一のペースで「ソフト闇金」を利用する。ネットに疎く、携帯はガラケーを使用する花村さんがソフト闇金の存在を知ったのは、業者からの営業電話だった。

 「闇金よりも金利がよく(安く)、催促をしない、というんです。本当かよと思いましたが、当時世話になっていた闇金の借金20万円分を借り換えたところ、支払額も減って、わずかばかり返済が遅れても、怖い取り立てがない。返済の相談にまで乗ってくれる」

 こう話す花村さんだが、かつて闇金業者に勤めた経験のある男性によれば、花村さんは知らない間に「カタ」にはまっていると指摘する。

 「貧乏人のケツをいくら叩いたって出ない物は出ない。ならば、低額を貸しつけて、ゆっくりやんわり切り取ってゆく。実際に高圧的な闇金業者は、客が敬遠するし、回収できないパターンも増え、何より摘発のリスクが高すぎる。それならってことで登場したのがソフト闇金。花村さんの20万円の借金は、元々3万円を借り入れたものが膨らんだ形だというから、法外な利息だし、完全に違法行為。たとえ全額返済されても、こういう客はいずれパンクする見込みがあるから、同業者間で顧客情報を共有し、たらいまわしにして、ゆっくり搾り取れば良いのです」

 ソフト闇金が蔓延する背景には、大手メガバンクなどが旗振りした結果、カードローン破産に追い込まれるような、経済的に追い詰められた一般消費者の増加がある。いくら政府やマスコミが好景気だと煽っても、その恩恵は一部が享受しているだけ。いわゆる「中流」と呼ばれる層が消え、高所得者と低所得者の二極化が進む中、ソフト闇金のニーズは、より高まりつつある。

 「結婚式などが続いたため、夫に内緒でも借りられるソフト闇金を利用しました」

 都内在住の主婦・A子さんは、知人の結婚式に持参する祝儀を捻出できず、クレカのショッピング枠を「現金化」できるという業者を通じて、現金3万円を捻出しようと試みた。しかし、3万円を手にするには手数料や金利分などを含め、5万円以上を借り入れなければならないことを知る。そんな時、ネット上のバナー広告でソフト闇金の存在を知った。

 「ソフト闇金なら、4万ちょっとの借り入れで手元には3万円が残る、そう説明されました。やり取りもメールで出来て、ネットにはこの業者の悪評もなかった。こうして安易に借りてしまったのです……」

 その後、Aさんは全額を返済したが、週ごとに別の「ソフト闇金」業者から電話やメールが寄越されるようになり、少しでも生活が苦しいと思った時には積極的に利用するようになってしまった。前出の元闇金業者は、A子さんも完全に「カタ」にハマったパターンだと指摘する。

 「借り癖は直らない。こういう客は細く長く持っておく。昔みたいに数十万を貸して百万円を回収する、ということは現実的でないから、なんとか返せそうな額を貸しつけ返済させ、回数でアガリ(儲け)を出す。だからこそ”ソフト”であることが重要だし、返済相談などアフターケアも行えば、客もカモられていると気がつきにくい」

 実は当初、ソフト闇金の窓口担当者から融資を断れらたというA子さん。担当者がA子さんを”個人的に信用”した上で、手元に3万円が残るよう調整し”個人的な貸しつけ”を行ったのだという。こういったやり取りで、よりソフトさ、人間らしさを演出しているものとみられる。さらに”個人間融資”であることから、出資法に抵触せず、借りた人間に「人情的なプレッシャー」を与えることができると考える業者の目論みもあるようだ。

 しかし違法は違法。貸金業者に義務づけられた登録をしておらず、闇金より安いとうたっている金利も、法に沿ったまともなローンなどに比べて高すぎる。ところが、様々なやり取り、駆け引きを通じて、被害者に被害の自覚を持たせない。この飴と鞭の使い分けは、詐欺師や反社会的勢力の常套手段である。

 「悪いやつだけどいい人」などというのは、漫画や小説の中だけに存在する幻であり、弱い立場、苦しい立場にある人々は、往々にして彼らに飛びつきやすい。ソフトだろうがハードだろうが、騙しのプロ達は被害者の首を、ゆっくりだが確実に、締め上げていることに他ならないのである。「ソフト」という言葉にだまされて、一生、悪人に金を巻き上げられ続ける生活にはまり込んではならない。