【中原英臣 あの医療情報ウソ?ホント!】貴ノ岩も診断された「脳震盪」 スポーツ分野で深刻化、「張り手禁止」検討する必要も

貴ノ岩が頭部に受けたダメージは深刻だった

 元横綱日馬富士に暴行を受けた幕内貴ノ岩の診断書に「脳震盪(のうしんとう)」という記述がありました(他に左前頭部裂傷なども)。脳震盪は、頭部に衝撃を受けた直後に発症する一過性の意識障害や記憶障害のことです。ちなみに「震盪」は激しく揺れ動かすという意味です。

 意識障害については軽度で一瞬程度のものから、重度のものでは数時間になることもあります。軽度の場合は意識障害が起きませんし、一般的な画像診断では異常が見られない場合が多いようですが、当人は何が起こったか理解できないこともあります。

 こうした意識障害は脳神経伝達物質の代謝異常によって起きます。その結果、注意力や集中力が低下したり、記憶障害が起きることがあります。代謝が正常に戻るまでの時間は年齢や性別による差がありますが、2週間から6週間ほどといわれています。

 脳震盪には後遺症の心配があります。医学的には「脳震盪後症候群症状」と呼ばれるもので注意力や集中力の低下、めまい、疲労感、頭痛、睡眠障害などといった症状が出現します。また、脳震盪を繰り返すと「慢性外傷性脳症」になることもあります。

 スポーツの最中に起きた脳震盪はスポーツ障害に分類されます。アメリカンフットボール、ラグビー、ボクシングなどのコンタクトスポーツ、さらにモーターバイク、乗馬、スキーなど転倒して頭部を強打しやすいスポーツに多いようです。

 スポーツ分野でも最近、脳震盪を深刻に取り扱うようになりつつあります。ラグビーでは脳震盪の疑いのある選手は退場となり、医師の診察を受けることが決められています。米サッカー協会は2015年、10歳以下の子供のヘディングを禁止しました。

 昨年11月の日本臨床スポーツ医学会学術集会で、谷諭会長がスポーツにおける脳震盪の深刻さを訴えたほどです。脳震盪は決して軽くみてはいけないものなのです。相撲の張り手も脳震盪を起こす可能性がありますから、禁止することを検討する必要があるかもしれません。(山野医療専門学校副校長・中原英臣)