【酔いどれ師匠の酒場探訪】若旦那との日本酒談義も… 陽が高いけど一杯やりたい「蕎麦処 寿々喜」(東京・三鷹)

新酒三種飲み比べ700円、蕎麦がき500円、玉子焼き小300円とリーズナブル

★「蕎麦処 寿々喜」(東京・三鷹)

 日曜の午後3時過ぎ。まだ陽が高いけど一杯やりたい…。矢も盾もたまらず、近所の蕎麦屋『寿々喜』へ。若旦那が「新酒、いろいろ仕入れましたよ」と一升瓶を並べてくれる。「どれも飲みたい」と三種飲み比べセットを頼む。ああたまらない。至福の休日昼下がり…。

 大正から昭和にかけて活躍した作家の内田百間は、近所の蕎麦屋『中村屋』をこよなく愛し、毎日正午に出前をとったという。《うまいから、うまいのではなく、うまい、まづいは別として、うまいのである。(中略)ここいらには、名代の砂場があるとか、つい向うの通に麻布の更科の支店があるではないかなどと云われても、そんなうまい蕎麦は、ふだんの盛りと味の違ふ點で、まづい。》と、「普通の蕎麦屋の普通にうまい蕎麦」について書いている。

 休日の午後、ぼーっと酒を飲み、蕎麦を食べるには中休みのない近所の街蕎麦屋さんが最高である。よく蕎麦好きには「蕎麦そのものが好き」な人と「蕎麦屋の雰囲気が好き」な人がいるといわれるが、私はまぎれもなく後者。そして「蕎麦屋好き」はほとんどの場合、「蕎麦前で一杯」やるのが好きなのだ。

 若旦那の伊藤寿さんは、この『寿々喜』の三代目。初代は伯父さんで二代目はお父さんだが、2人は愛知から上京して大井町の『寿々喜』に住み込みで修業。そしてのれん分けにより50年前にこの地に開業した。三鷹生まれの若旦那は、高校卒業後ホテルのレストランに勤務。10年ほどしてから店を継ぐことを決意して家に戻った。ゆえに料理もお手の物である。

 山菜や長芋など季節によって変わる無料のアテがつくのも街蕎麦屋さんの麗しき慣習。それで三種飲み比べした後、玉子焼きや蕎麦がき、天ぷらなどを頂き、さらに若旦那と日本酒談義をして杯を重ねる。日本酒は週一回、「東京一の日本酒酒販店」と言われる多摩の小山商店に買い出しにいき、めぼしい酒を仕入れてくるので間違いがない。

 三鷹駅から徒歩だと20分近く。少々不便な場所だが、私にとっては最高の「近所の蕎麦屋」。大晦日は忙しいだろうから、少し前に年越し蕎麦と酒をいただきにあがろうかな。

 ■東京都三鷹市下連雀7の9の4(JR三鷹駅南口から徒歩20分、バス便あり)/(電)0422・44・7717/営業 11~21時/木曜休/予算=1人1000~3000円

 ■飯田達哉(いいだ・たつや) 1956年7月18日生まれ。スポーツ専門誌編集長を経て編集プロダクション「オフィス・トライアイ」を設立。スポーツ、酒、落語、吟剣詩舞などおもに趣味の分野の執筆・編集に携わる。著書に『日本酒日和』『三師匠 落語訪ねて江戸散歩』(ともに舵社刊)など。