【マンガ探偵局がゆく】メディアミックスの草分けだった「ソノシート」 誕生はパリのレコード会社が企画した音の出る雑誌

コダマプレスの「宇宙少年ソラン」とビクターの「テレビ漫画主題歌集」

★ミッション(19)音の出るマンガ本を探せ

 早くも2月半ば。つい先日「あけましておめでとう」と挨拶したはずなのに…。なので、年末の準備と当探偵局への調査依頼はお早めに。今回は、マンガそのものではなく、マンガ関連の調査依頼である。

 「子供の頃、アニメ番組の主題歌とドラマが薄い透明のアナログ・レコード盤に入ったものをときどき買ってもらいました。レコードはカラーの小冊子に挟み込まれて、絵と音で楽しめるようになっていたのです。最近は見かけませんが、なんと言いましたっけ」(自由業、54歳)

 

 依頼人が買ってもらったのはソノシート(ソノラマ・シートからの造語)だ。

 生まれたのはフランス。パリのレコード会社「サイーブ」のジャン・ボンファンティ社長が音の出る雑誌を企画して、大手出版社「アシェット」のイティエ・ド・ロクモール社長に協力要請したのがはじまり。ふたりは共同で、「ソノプレス」社を設立。音を表すラテン語「SONUS」と、見るものを意味するギリシャ語「HORAMA」を組み合わせた「ソノラマ」を開発した。

 1958年10月、ソノプレスはサウンドとビジュアルを一体化させたメディアミックス月刊雑誌「ソノラマ」を創刊。創刊号には、当時フランス首相だったシャルル・ドゴール(のちに大統領)の演説を含むソノシート6枚が綴じこまれていた。

 これに目をつけた朝日新聞社がソノプレスと契約を結び、朝日ソノプレス(のちの朝日ソノラマ)を設立。独自編集で『月刊朝日ソノラマ』を59年12月に創刊。創刊号には「週刊誌ブームといわれたのは、ついこのあいだのこと。今度は雑誌から音が出る。パリのムードを身につけたこの雑誌を若い世代にささげたい」とある。

 ただし、一歩先んじたのは、有斐閣の関連会社・コダマプレスだった。独自に「フォノシート」を開発し、2カ月早い10月に『歌う雑誌KODAMA』を、11月には『AAA』を創刊している。

 アニメのソノシートが登場するのは63年に朝日ソノプレスが発売した『鉄腕アトム』から。コダマプレスや日本ビクターなども参戦して、アニメだけでなく特撮など子供向けテレビ番組が続々とソノシート化され、大ブームになった。

 ほかにも、音楽雑誌の付録や語学の教材、初期のパソコンの記憶媒体などにも使われたが、CDの登場などで表舞台を去り、国内でのソノシート生産は2005年に終了した。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。2014年、日本漫画家協会参与に。