【マンガ探偵局がゆく】メカや武器を描くのが好きな松本零士が本領を発揮した「ララミー牧場」

松本あきら画「ララミー牧場」の別冊付録

★ミッション(20)60年代西部劇ブームでヒットしたのは?

 記録的な寒さが続いたが、四季の移ろいは早い。あとひと月ばかりで桜の便りが聞かれるところも出てきそうだ。

 今回の調査依頼は60代の男性から。

 「子供の頃のテレビ番組にはアメリカ製のドラマがたくさん並んでいました。『パパはなんでも知っている』などのホームドラマも好きでしたが、私の好みはなんといっても西部劇。今風に言えばウエスタンです。おもちゃの拳銃を買ってもらって、自転車を馬がわりに遊んだものでした。『ローハイド』『ボナンザ』『ローンレンジャー』『ライフルマン』『拳銃無宿』……。中でも好きだったのが『ララミー牧場』でした。雑誌で『ララミー牧場』のマンガを読んだ記憶もあるのですが、どなたのマンガだったのか思い出せません。ぜひ調査してください」(拳銃オヤジ)

 テレビで西部劇が流行ったのは主に1960年代前半。まだモノクロテレビが主流だった時代だ。ドラマの舞台になったのは南北戦争後のアメリカ西部。馬に乗り拳銃を使うカウボーイたちの活躍に日本の子供たちも夢中になった。中でも人気を二分したのが、「ローハイド」と「ララミー牧場」だった。「ララミー牧場」はアメリカNBC制作で、日本ではNET(いまのテレビ朝日)などで60年から63年まで放送。

 ならず者に父親を殺され、残されたシャーマン牧場を父の友人のウイリー爺やとともに守るスリムとアンディの兄弟。ある日、牧場に流れ者のガンマン・ジェスが現れる。すばらしいガンさばきで牧場を狙うギャングを倒したジェスは、そのままスリムたちとともにシャーマン牧場で働くことになる。ララミーというタイトルは牧場があるワイオミングのララミーからつけられている。

 マンガは集英社の低学年向け月刊誌『日の丸』で60年10月号から62年10月号まで連載され、本誌のほかに別冊付録もつく人気作だった。描いたのは、松本あきら。松本零士の旧ペンネームだ。

 メカや武器を描くのが好きだという松本はこの作品でも本領を発揮していて、ジェスとスリムの持つ拳銃はほかのマンガにはなかったようなリアルさで細部まで描かれていた。キャラクターもスマートで、テレビよりもマンガのほうがかっこいい、という男の子も多かったらしい。ちなみに、小学生だった探偵局長もそう思っていた口だ。

 版権の問題などでこれまで単行本化はされていないが、チャンスがあればぜひ単行本で読みたい作品だ。依頼人も同感だと思うが…。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。2014年、日本漫画家協会参与に。