【人とペットの赤い糸】人・動物・環境を守るワンヘルス理念 三者全てが欠かせない

人・動物・環境を守るワンヘルス

 人と動物がいつまでも健康で幸せに暮らせる社会をつくっていきたいが、人と動物には共通した病気、動物由来感染症(英語でZoonosis)が存在することを知っておく必要性がある。動物から人に感染する病気をいい、動物では発症しない場合もある。別の呼び方に、人獣(じんじゅう)共通感染症、人畜(じんちく)共通感染症などとも言われている。

 動物由来感染症の一つである狂犬病は、アジア、南米、アフリカなど世界に多く存在している。動物にかまれたり、ひっかかれたり、排泄(はいせつ)物に触れたりして直接感染する恐ろしい病気で、いったん感染すると致死率は100%だ。世界では毎年約6万人が命を落としている。

 日本では狂犬病予防法に基づき、飼い犬の登録と飼い犬への狂犬病予防注射や鑑札、注射済み票の装着が義務付けられており、1957年に猫で発生したのが最後になっている。

 動物由来感染症としては、狂犬病以外にも鳥インフルエンザ、ペスト、レプトスピラ症、日本脳炎、西ナイル熱など、世界保健機関(WHO)が認識しているもので200種類以上ある。特に野生動物をペットとして飼育している場合は、病気について分からないことが多いので注意したい。

 伴侶動物で健康なペットとの触れ合いは基本的に問題ないが、過度で濃厚な触れ合いなどは避け、手洗いなどは普段から心がけたい。

 動物から人へ感染する病気、また、環境によって人と動物双方の健康が脅かされることが多くなってきていることに鑑み、2015年5月にグローバルヘルスの向上を目的に、「One Health(ワンヘルス)」の理念の下、スペインのマドリードで人間の医師と獣医師を中心にした第1回のワンヘルスに関する世界会議が開催された。

 ワンヘルスとは、人の健康、動物の健康、環境の保全のためには、三者の全てを欠かすことができないという認識に立ち、それぞれの関係者が「One for All,All for One」(1人はみんなのために、みんなは1人のために)の考え方に基づいて緊密な協力関係を構築し、活動していこうとする理念のことだ。要するに、専門家一人一人がそれぞれの立場で人の健康、動物の健康、環境の保全に貢献していこうという考え方である。

 日本では、16年11月に日本医師会の横倉義武会長と日本獣医師会の蔵内勇夫会長のリーダーシップの下、世界獣医師会、世界医師会によるワンヘルスに関する2回目の国際会議が福岡県北九州市で開催された。ワンヘルスに関して重要な福岡宣言がなされ、その後のワンヘルスの考え方の推進に弾みをつけた。

 ■越村義雄(こしむら・よしお) 一般社団法人「人とペットの幸せ創造協会」会長。同ペットフード協会名誉会長。一般財団法人日本ヘルスケア協会理事、「ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会」部会長など。