【マンガ探偵局がゆく】日本人が描いたアメコミって? 米でも人気の桑田次郎『バットマン』と池上遼一『スパイダーマン』

桑田次郎版『バットマン』と池上遼一版『スパイダーマン』

★ミッション(22)日本人が描いたアメコミって?

 今回はアメリカンコミックのファンだという大学生からの依頼だ。

 「アメコミを題材にしたハリウッド映画が大好きです。アクションがかっこいいし、特撮もすごい。ヒーローたちがタッグを組んで戦う『アベンジャーズ』などにもしびれます。バイト先にもアメコミ好きの上司がいて、アメコミ話で盛り上がるんですけど、先日『日本のマンガ家が描いたアメコミがあるの知ってる』と言われて、つい『知ってますよぉ』と答えてしまいました。実は、知らないんですけど、こっそり教えてください」

 自分で調べたり、探したりしないところがイマドキなのかな。お手軽なネットで探さないところに免じて、こっそり教えよう。

 本場アメリカでもコアなファンがいるのが、桑田次郎が1966年に『週刊少年キング』『月刊少年画報』に連載した『バットマン』だ。科学探偵ものを意識した60年代半ばのアメリカ製テレビシリーズをベースに、少年誌の読者向けに、派手なアクション・シーンを増やしたところがミソ。2013年に小学館クリエイティブから復刻版が出て、アメリカでも『THE BAT MANGA』として翻訳されたそうだ。

 もうひとつの人気作が、70年に『月刊別冊少年マガジン』で連載された、池上遼一の『スパイダーマン』。舞台を現代日本に移して、スパイダーマンに変身するのは小森ユウという内気な男子高校生。アメリカンコミックに詳しい翻訳家で、マンガ・アニメの研究家でもある小野耕世が原作の翻訳とマーベルコミック代表スタン・リーとの仲介役を務め、途中からはSF作家の平井和正が原作者として加わった。

 71年には『ぼくらマガジン』で、小池一夫・原作/西郷虹星・マンガで『ハルク』の連載も始まっている。ベースになっているのはおなじみの『超人ハルク』。テレビドラマ版が日本で放送されたのは、74年からなので、マンガ版の方がはやい。やはり、翻訳家の小野耕世が企画に関わっている。

 最近では、『週刊少年ジャンプ』の人気連載作、堀越耕平の『僕のヒーローアカデミア』が、アメコミの翻訳ではないもののアメコミの世界観を取り入れて成功している。作者もインタビューでは『X-MEN』などの影響にふれているほどだ。

 大御所では故水木しげるがいる。初期作品には、影のつけ方などにアメコミタッチが取り入れられていて、生前のインタビューには『ヘルボーイ』のファンと答えたものもある。たぶん、バイト先の上司もここまでは知らないのではないかな。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。2014年、日本漫画家協会参与に。