記事詳細

【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】地酒ブームを牽引してきた賀茂泉酒造 水と寒さで醸す“元祖”純米酒 (1/2ページ)

★広島県「賀茂泉」(上)

 関東人は、「酒どころ」というとすぐに東北や新潟をイメージするが、全国的には関西の灘・伏見、そして西日本では広島が古くからの酒どころとして知られる。

 その広島における酒づくりの中心地が、東広島市の西条という町である。実際、JR西条駅を出ると、酒の名前が書かれた赤煉瓦の煙突が、いくつも見えてくる。道の両側に続くのは蔵のなまこ壁だ。

 なにせ西条の街には、8つもの酒蔵が集まっているのだから、左党の散策にはもってこい。毎年10月に行われる「西条酒まつり」には、20万人もの酒好きが結集して、西条の酒を飲みまくるという。私は未体験なので伝聞だが、その2日間は町中が酒臭くなり、酔っぱらい達であふれかえるそうだ。

 そんな西条の中で、小さいながら昭和50年代の地酒ブームを牽引してきた蔵が、賀茂泉(かもいずみ)酒造だ。訪ねたのは年末の、雪の降る寒い日だった。「広島は暖かい」と勝手に思っていたが、さにあらず。西条は標高250~300メートルの盆地にあるため、広島市内に比べ格段に寒い。

 「西条で酒づくりが盛んになった理由のひとつが、この寒さです。もうひとつは水。龍王山の伏流水が、50年かけて西条に到達し、こんこんと湧き出ています。私たちはこの水を守るため、森の木を間伐し、里山を保存する活動をしています」そう話すのは、前垣壽宏(かずひろ)副社長。

 そのほか西条には、杜氏の郷である安芸津に近かったことや、1894年に鉄道の駅ができ、軍都であった広島や呉などの大消費地に、酒を運びやすかったという利点もあった。