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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】酔っぱライターのお酒見聞録】華やかで甘く軽やか、奥底にほんのりバーボンが…「富士山麓シグニチャーブレンド」 (1/2ページ)

★静岡県富士山麓(下)

 キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所は、キリングループのウイスキー蒸溜所。フラッグシップは「富士山麓」だ。マスターブレンダーの田中城太さんに、蒸溜所を案内してもらった。

 特徴の一つは貯蔵庫。18段の高層ラック式で、ビル10階建ての高さがある。空調はなく、原酒は富士の裾野の大自然に抱かれて眠りにつく。湿度が高いため、水分よりアルコールの方が蒸発しやすいという。

 もう一つは、グレーン原酒をつくる蒸留機の多彩さだ。マルチカラムは一般的な連続式蒸留機で、スッキリとしたライトタイプのグレーン原酒がつくられる。ブレンド全体をまとめてくれる縁の下の力持ちとなる。

 ケトルはカナディアンタイプの単式蒸留機で、カナダ以外では、ここ富士御殿場蒸溜所でしか使われていない。甘く芳醇な香りと適度なボディー感のある、バランスの良いグレーンになる。シングルグレーンとしても活躍する、「富士山麓」のキーグレーンだ。

 ダブラーはバーボンに使われる蒸留機で、アメリカ以外ではここにしかない。味わい豊かで重厚な、ヘビータイプのグレーン原酒となり、独特のパワフルさや華やかさを生かすために、内面を焦がしたホワイトオークの新樽で熟成させる。

 こうした多様性は、1973年の創業当初、ここがキリン・シーグラムの蒸溜所だったことに由来する。2005年にキリンディスティラリーとなった後も、アメリカのシーグラム社と、イギリスのシーバス・ブラザーズ社の技術を継承しているのだ。そしてこのグレーン原酒の個性が、クリーン&エステリー(=熟成由来の甘く華やかな香り)と評される「富士山麓」の味わいの核となっている。