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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】ブランド定着「究極の食中酒」 発売から30年以上…カジュアルで若者も手に取りやすい久保田を (1/2ページ)

★新潟県「久保田」(下)  

 1985年に朝日酒造(新潟県長岡市)が出した新ブランド「久保田」。まだ級別制度があった時代なので、二級を百寿(現在の特別本醸造)、一級を千寿(同吟醸)として売り出した。都会のホワイトカラーをターゲットにした、淡麗辛口の高級酒。だが、当時は全く売れなかった。

 店頭でお客さんにすすめても、評判は芳しくない。酒販店からは「こんな水みたいな酒は売れない」と断られ続けた。流れが変わったのは91年頃。酒販店から、寿司屋など高級飲食店へと、営業先を変えてからだ。

 淡麗辛口の酒は、酒だけで満足するというより、食事のお供に最適な食中酒。それがお店にもお客にも認められ、さらに販売先を高級店に限ったことで、高級イメージがついた。お客のニーズはあり、マーケットはあったのに、気づかなかっただけだったのだ。

 それからは、毎年120%ずつ売り上げは伸びていった。商品ラインアップも、萬寿(純米大吟醸)、翠寿(大吟醸生酒)、碧寿(山廃純米大吟醸)、紅寿(純米吟醸)と増えていった。予約に製造が追いつかないほど売れたが、設備投資は精米所の建設から始めて、蔵を少しずつ拡張し、完成まで26年を要した。

 発売から30年以上を経た今、「定番の銘酒」という確固たる地位を獲得したと同時に、久保田と一緒に年をとった飲み手も60代となった。そこで、もっとカジュアルで、若者も手に取りやすい久保田を世に出すことにした。それが四合瓶で1570円の純米大吟醸だ。