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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】イモから始まった試行錯誤、埼玉県「コエドビール」 「サツマイモラガー」ブーム後、本物造りに立ち返り (1/2ページ)

★埼玉県「コエドビール」

 クラフトビールの中では値段も手頃で、スーパーなどでも容易に手に入るコエドビール。母体は生協などに有機野菜を卸す専門商社の協同商事だ。本社のある埼玉県川越市は、関東ローム層の痩せた土地なので、江戸時代の川越藩主、柳沢吉保は農民にサツマイモを作らせた。

 各農家は裏庭にくぬぎなどの広葉樹を植え、落ち葉を堆肥にして痩せた土地を耕したという。今でいう循環農業で、これは現在でも川越で行われている有機農業につながっている。また、連作障害を防ぐため、野菜作りの合間には昔から麦が植えられた。この麦を有効活用できないか? というのが、この地でのビール造りの発端だった。

 しかしいろいろ調べると、麦はそのままではビールにできないので、まず麦芽にしなければいけないし、焙煎もしなければいけない。とても小さな会社ひとつでできることではないと判明し、地元の麦はあきらめて、特産品のサツマイモを使ったビールを造ることにした。

 江戸の台所として栄えた川越は「小江戸」と呼ばれ、風情ある町並みが残っている。そこで1996年、「小江戸ビール」という名前でビール造りを始めた。サツマイモから造った世界初の「サツマイモラガー」は当時たいへん話題になり、私も飲んだ記憶がある。

 川越の郊外につくったビアレストランは、行列ができるほど人気となり、おみやげ物としてもよく売れて、小さなビール工房では生産が追いつかなくなった。そこで1997年に三芳工場を建設。工房の10倍の生産ができるようになった。