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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】古式製法で蘇った絶品焼酎 鹿児島県「大石酒造」 (1/2ページ)

★鹿児島県「大石酒造」(上)

 大石酒造(鹿児島県阿久根市)とのつきあいは長い。私が1冊目の著書『タイ・ラオス・ベトナム酒紀行!』を出版した直後の1996年、鹿児島で「焼酎アジアフォーラム」という催しが開かれた。

 焼酎の源流をさかのぼると、タイに行き着くといわれている。タイにはラオカーオという米焼酎があり、私はドラム缶で蒸溜されているその酒を、ついこの間飲んできた生き証人ということで、フォーラムに呼ばれたのだ。

 私以外のパネリストは、大学教授や酒の研究者など、そうそうたるメンバー。なぜ私なんかが呼ばれたのかと不思議だったが、その仕掛け人が大石酒造の大石啓元社長だったのだ。

 大石社長は私の本を読み、タイの蒸留機が、鹿児島で明治時代まで使われていた「かぶと釜」という蒸留機に似ていることに、興味をそそられたという。なぜなら、大石社長はその頃、かぶと釜の復刻に取り組んでいたからだった。

 かぶと釜のことを薩摩藩の古文書で知った大石社長は、この古くからの焼酎製造法を再現したいと考えた。そして、地元の博物館に展示されていたかぶと釜の模型を、何日も通い続けて目測をし、設計図を書いては書き直すことを繰り返した。

 試作機からようやくアルコールが抽出されても、蒸溜にたいへん時間がかかる上、ごく少量しか生産できないため、商品化にはほど遠い日々が続いた。

 しかし、その手間と時間によって、かぶと釜独特の香味豊かな、他では味わうことのできない個性ある焼酎が出来上がるのだ。