記事詳細

【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】受け継がれる檜香る“復刻焼酎” 鹿児島県「大石酒造」 (1/2ページ)

★鹿児島県「大石酒造」(下)

 薩摩焼酎の蔵元、大石酒造(鹿児島県阿久根市)の大石啓元社長は、日本でただひとり「かぶと釜」を復刻した人だ。かぶと釜とは原始的な蒸留機で、鹿児島では明治時代まで焼酎づくりに使われていた。そしてそれは、私が東南アジアの奥地で目にした蒸留機と同じ構造だった。

 タイやラオスの蒸留機はドラム缶製だったが、大石社長のかぶと釜は檜製。少しずつじっくりと蒸留される芋焼酎には、檜の香りがほんのりとつき、味わいは香味豊か。20年前、蔵を訪ねてかぶと釜蒸留焼酎第1号の「がんこ焼酎屋」を飲んだ私は、その旨さにぶっとんだ。

 先日、久しぶりに大石酒造へ行き、大石社長と再会した。蔵は20年前のままで、狭いスペースに仕込み用の甕壺(かめつぼ)が並び、中央に麹用の三角棚が置かれていた。壜詰めラインはないので、一本一本パートさんが焼酎を手詰めしている。

 ただひとつ変わったところがあった。昔は1台だけだったかぶと釜が、3台に増えていたのだ。かぶと釜は少しずつしか蒸留できないので、蒸留に時間がかかる。生産量を増やすには、台数を増やすしかない。今3台あるのは、あれからかぶと釜が世の中に認められ、着実に需要が増えてきた証しである。

 商品アイテムも増えていて、代表銘柄の「鶴見」にも、かぶと釜バージョンができていた。通常の「鶴見」は、芋らしい味と香りが詰まったどっしりとした印象だが、「かぶと鶴見」はかぶと釜由来の檜の香りが心地よく、軽やかでスッキリとした味わい。「鶴見」がお湯割りなら、「かぶと鶴見」はオンザロックが似合う。