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【BOOK】遣唐使まで遡る広い視野で日中問題を考えてほしい 安部龍太郎『平城京』 ミステリー、恋物語としても (1/3ページ)

★安部龍太郎さん『平城京』KADOKAWA 1800円+税

 歴史時代小説の第一人者である。直木賞を受賞して5年。近年は中世から古代に領域を広げている。デビューから30年の今年、古代ものの2作目となる『平城京』を上梓し作品への意欲横溢(おういつ)。その意気込みを聞いた。(文・竹縄昌 写真・三尾郁恵)

 --執筆のきっかけは

 「遣唐使の阿倍仲麻呂を書きたくて、その下調べの勉強をしながら仲麻呂に至る助走のような小説を書こうと思いました。その1作が遣隋使の『姫神』でした。さらに平城京のことを調べるとその造営が唐との外交関係に非常に密接した“事件”だったことがわかるなど、すごく面白い。それなら平城京を作る物語を書いてみようと思ったのです」

 --ストーリーはどう生まれたのですか

 「テーマの次に重要なのは誰を主人公にするかということ。遣唐使船に乗っていた阿倍船人(ふなびと)を中心に据えると阿倍比羅夫や阿倍宿奈麻呂(すくなまろ)との関係も書けるし、また船人自身が唐に行ったことがあるので唐との外交関係、そして唐から学ぶことの重要さをわかっている人物を前提に構成できると思いました。さらに、造営で最大の障害が朝廷内の遷都推進派と反対派。そこからミステリアスな黒幕の問題など、いくつかのフィルターを重ね合わせていきました」

 --現在の半島情勢、日米関係を想起しました

 「僕も似ているなあと思いながら書いていました。唐の冊封国(さくほうこく)となれば、天皇は唐の皇帝の家臣になってしまい、朝廷としてはまずいわけです。だから国内向けには対等の関係と言いながら、唐に対しては冊封国だという、いわばダブルスタンダードです。日米関係に通じるのはまさにそこじゃないでしょうか」

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