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【BOOK】「散髪屋」→「理容室」への進化を“スポ根”チックに描く 上野歩さん『キリの理容室』 (1/3ページ)

★上野歩さん『キリの理容室』講談社(1500円+税)

 ■描きたかった「年齢重ねても客と長く付き合える仕事」

 美容室隆盛の陰で、衰退産業といわれる理容室業界が舞台。これまでの理容室のイメージを変えようとする20歳の理容女子・キリを描いた。“お仕事小説”で定評がある著者の第10作。今回もエンタメ小説として楽しめる。(文・竹縄昌 写真・三尾郁恵)

 --削り屋、型屋、絞り屋ときて、理容業界です。きっかけは

 「ある一般財団が中小企業を対象として優れた商品、ビジネスモデルを表彰する事業を展開していて、僕はその受賞者を取材して読み物風の原稿を書いています。そこで出合った2つの理容室がきっかけでした」

 --具体的にどんな

 「ひとつは、昔ながらの理容室からレディースシェービングの専門店を展開している会社。しかもそこの理容師さんは国内コンテストの下位から日本チャンピオンになるんです。最初は腕の悪い理容師が日本チャンピオンに上り詰める話もありかなと思いました。ところがその後、ヘッドスパなどを取り入れて赤白青のサインポールがないトータルメンズサロンとして展開するサロンが受賞したんです。そこで、昔ながらの散髪屋さんから最新の理容室への進化の過程をひとりの理容師の成長の中で描けるんじゃないか、と」

 --若い女性が主人公です

 「そういう質問が出るほどに、理容室は男性理容師というイメージですよね。男性社会というか、男性が通って男性が頭を刈るという理容店の主人公を女性にすることによって、読者は女性が生きにくい場所で頑張っている主人公に感情移入して、応援を得られるんじゃないかと思い、女性にしました。それに美容師はアイドル、理容師は演歌歌手に例えられる。理容師は年齢を重ねてもお客と長く付き合える仕事であることも描きたかったんです」

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