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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】海軍はこんな旨い酒を飲んでいた! “戦艦大和に積まれた酒”も再現 広島県「千福」 (1/2ページ)

★広島県「千福」(下)

 千福(せんぷく)は、広島県呉市の酒蔵だ。呉港は、戦前には海軍、戦後は海上自衛隊の基地がある軍港。そのため、千福は戦前から戦中にかけて、海軍に納められた酒だった。今回の豪雨では呉にも被害があったが、幸い蔵は無事で、井戸の水も出ている。また道路は寸断されているが、呉港を利用して海路から物資が入ってきているそうだ。

 千福には現在2つの蔵があり、呉宝庫(ごほうぐら)では特定名称酒を、吾妻庫(あづまぐら)では、その他の製品を醸造している。呉宝庫をあずかる瀬戸富央杜氏に話を聞いた。

 レギュラー酒の麹米と特定名称酒の原料米は、すべて八反錦など広島の酒造好適米を使っている。酵母も広島県産だ。

 「千福は広島のナショナルブランドなので、メイドイン広島を目指してやっています。全国の鑑評会では、ほぼ毎年金賞を受賞していますが、とくに重要視はしていません。うちは9割がレギュラー酒、大衆の酒ですから」と瀬戸さんは言う。

 そうなのだ。大吟醸が旨いのは当たり前。だからレギュラー酒の旨い酒蔵が本物だと、私は強く思っている。千福の辛口、通称「三角」は、燗で良し冷やで良しの、オールマイティー。飲み飽きしない究極の晩酌酒だ。こちらは吾妻庫の杜氏、大名大輔さんの作である。

 瀬戸さんが手がけた中では、「神力八十五」を千福最高峰の酒として挙げたい。神力という戦前の酒米を復活させるところから始め、あえて85%までしか磨いていない。生もとづくりの純米無濾過原酒だ。骨太でしっかりとした酸があり、力強い。ぬる燗にするとさらに米の旨味が花開く。

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