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【BOOK】対を成す作品が三島賞受賞と芥川賞候補に 古谷田奈月さん「無限の玄/風下の朱」 (1/2ページ)

★古谷田奈月さん『無限の玄/風下の朱』筑摩書房 1400円+税

 対を成す作品が、片や三島由紀夫賞受賞作、片や芥川賞候補作となった。惜しくもダブル受賞は逃したが、これはもはや実力の証明。三島賞の受賞コメントで“セクハラ疑惑事件”に言及するなど、ジェンダーへの意識も高い気鋭の作家に聞いた。(文・竹縄昌 写真・寺河内美奈)

 --別々の作品で三島賞受賞と芥川賞候補となりました

 「たまたまタイミングが良かったということじゃないでしょうか」

 --三島賞受賞の『無限の玄』は男だけが登場。早稲田文学の女性作家だけの増刊号に掲載でした

 「女性号なので基本的には女性をテーマに書くことだと思ったんですけど、男性の物語を書くことによって、逆に女性を照らし出せないかと最初に思いました。そこから、私から見た男性社会とかそこに根付く問題を自分なりに解釈できないかと思いました」

 --父権が強い一族による男5人のブルーグラスバンドという構成です

 「5人の男性だけの家族という設定はいつからか私の頭の中にあったことなんです。それをそろそろ自分の外に出したいという気持ちになりました。閉鎖的状況を書きたかったので、家族の中でお互い縛りあっている構図とバンドという関係性、それから家の中や“月夜野”という土地から出られない閉じた雰囲気を家族構成を通して出したいと思いました」

 --家長でバンドリーダーの玄は強権的な父性の人物です。モデルは

 「父親を描くというより社会を見ていて感じたことを家族に移し替えてみました。男性たちが、閉じたコミュニティーの中でカリスマ的というか逆らえない人を上に置いた環境に抑圧されつつ、どこかそれを心地よいと思っているような感じに私には見えましたから」

 「そこで、抜け出したいと思っているのに抜け出せない。どうしても心地よいと感じてしまう感性があって、それがなぜか受け継がれてしまっているということを書きたかったのです」

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