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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】老舗の技が生んだクラフトジン サントリーのROKU

★大阪府 ROKU(上)

 近頃の酒業界では“クラフトもの”が人気だ。クラフトビール、クラフトウイスキー、そしてクラフトジン。世界のあちこちに、小さな醸造所や蒸留所ができ、新しいビールやジンが生まれている。

 そんな中、サントリーがクラフトジンをリリースしたという。「さすが流行に敏感なサントリー、クラフトブームに乗ってきたか?」と思い、サントリー大阪工場(大阪市港区)へジンづくりを見に行った。

 そのジンはROKUといい、6種の日本の素材を使用した和テイストが特徴だという。つくったのは、商品開発研究部・シニアスペシャリストの鳥井和之さんだ。

 1919年竣工の大阪工場は、サントリーで一番古い工場。単式蒸留機4基、連続式蒸留機1基があり、さまざまなスピリッツやリキュールの原料酒をつくることができる。古い工場だけに免許の種類は豊富で、焼酎甲・乙、ウイスキー、ブランデー、ワインなど、ほぼすべての酒をカバーしており、現在130種類もの酒をつくっている。

 たとえば4月は桜の花びら、6月は梅の実、7月は桃など、四季折々の植物や果実で、桜リキュール、梅酒、ピーチリキュールなどの原料酒をつくっているのだ。

 初めてジンがつくられたのは、1936年。ヘルメスジンという名前だった。それから64年にサントリージン、80年にサントリージン エクストラ、81年にサントリージン プロフェッショナル、95年にサントリーアイスジンと、コツコツとグレードアップしながらジンを作り続けてきた。

 そう、ROKUは一朝一夕にできたジンではなく、戦前からの技術の蓄積から生まれたジンなのだ。「ROKUを開発するときも、さまざまな原料や蒸留法を検討しましたが、2年で出来上がったのは、先輩たちの長い積み重ねがあったからです」と鳥井さんは言う。

 しかもバナナリキュールの原酒の蒸留を見ると、ひとつひとつ手で皮をむいて用意するなど、まったくの手作業。クラフト感たっぷりな様子に驚いた。

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。近著は『ビジネスパーソンのための一目おかれる酒選び』(平凡社刊)。