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【ベストセラー健康法】食事に重要なのは歯だけではない 餅で喉を詰まらせないための“舌”の鍛え方 (1/2ページ)

 食べ物を口に入れて噛んでいる時、あるいは咀嚼(そしゃく)を終えて飲み込もうとするとき、「舌」がどのような形で、どのような動きをしているか知っている人はほとんどいない。舌は、とても複雑な動きで咀嚼から嚥下(えんげ)までをつかさどるが、なぜか人は、そのことに意識を向けることをしない。

 「8020運動」(80歳になっても自分の歯が20本以上残るように口腔衛生に気を付ける運動)の浸透で、日本人の歯は健康になってきてはいるという。しかし「舌」の健康はどうだろう。

 多くの人は「噛みづらい」という症状を感じたとき、歯に問題があると考える。そして歯科医院に行き、義歯の調整などをしてもらうのだが、それだけでは解決しないことが多い。

 じつはこの時、「舌の機能」も低下していることが多いという。

 『あなたの老いは舌から始まる』(NHK出版刊)の著者で、日本歯科大学教授と同大口腔リハビリテーション多摩クリニック院長を務める菊谷武氏は、本書の中で、「歯があれば噛める」という勘違いがベースにあると指摘する。

 「噛む力」を構成する要因には、奥歯の噛み合わせを意味する咬合(こうごう)支持、口の力強さや巧みな動き、食べ物の物性などを判断し、適切に処理する認知力などがあるという。これらが高度に、複合的に関与し合うことで「噛む」という行為が実現する。決して「歯」だけの働きではないのだ。

 話は変わるが、正月になると高齢者が餅をのどに詰まらせる事故が頻発する。一般には高齢者は嚥下機能が低下することによるものと考えられがちだが、菊谷氏らのグループによる研究では、咀嚼力と認知力の低下も関係していることが明らかになっている。咀嚼力が落ちれば本来飲み込めないような塊を喉に送り込んでしまうし、認知力が落ちれば丸呑みや詰め込みが多くなる。そして、こうした不幸な事故を防ぐうえで、“舌の健康”が非常に重要な意味を持つこともわかってきているというのだ。