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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】遠心分離で極めた香りと旨み 宮城県「勝山」 (1/2ページ)

★宮城県「勝山」(下)

 仙台の銘酒「勝山」を醸すのは、330年続く地元屈指の名家、井澤家だ。12代目当主の伊澤平蔵社長は14年前、仙台の市街地にあった蔵を、良質の水が湧く泉が岳の麓へ移し、まったく新しい酒づくりを始めた。目指したのは世界で戦える、トップクラスの酒だ。

 つくり手は、農大卒を中心とした若手4人。極限まで手間暇をかけ、細部にまでこだわり抜くため、1週間にタンク1本しか仕込まない。通常は、1日か2日で1本仕込むのにである。

 もうひとつのこだわりは、搾りに遠心分離機を使うこと。これは秋田県で開発された技術で、袋に入れたもろみを吊し、ポタポタと垂れる雫を集める大吟醸の搾りを、機械で行う方法だ。酒に袋の香りがつかないこと、香味が酒粕に移らずすべて酒になること、酸化が少ないこと、短時間で搾れることなど、袋搾りより優れた利点が多くある。だが井澤社長がその酒を飲んでみると、のっぺりとして薄っぺらく感じたという。

 「遠心分離で搾れば、なんでも旨い酒になるというのは間違いです。実際、高い機械を導入したものの、使いこなせなかった蔵は多い。遠心分離を生かせるのは、ふくよかで健全な完熟もろみ。これだと酒に、ふくよかさと透明感が出るのです」

 こうしてフラッグシップとなる純米大吟醸「暁」が生まれた。飲んでみると、華やかな香りと旨みが、パワフルにガツンとくる。ゴージャスな酒だ。これを1本1万円で売り出したところ、国内外で大絶賛され、すぐに完売した。

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