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【BOOK】愛する者の存在によってしか自分を定義できない男の物語 東山彰良さん『夜汐』 (2/2ページ)

 --本書では命のあり方も扱われていますが、命とは

 「運がよければ最後まで歩き通せて、運が悪ければ途中で奪われるもの。この物語でいうと、殺し屋の夜汐(よしお)が、運の悪い部分を司っています。病気や交通事故と同じような、ひとつの象徴としての立ち位置で描きたかったものです」

 --登場人物たちはそれぞれの運命を背負っています

 「運命とは不可思議なもので、人生が思わぬ道に入っていく、その分岐点のことを言うのかもしれません。人生において、それまでの経験で背負い込んできたものが分岐点に行き当たったときに変えられなければ、その人の運命もまた変えられないのではないか。それを意識して人物像を創りました」

 --物語に出てくる悪魔的な存在も気になります

 「物語中で想定している悪魔は、デーモンではなくてデビルです。ぼくの中でデーモンは災害のように破壊を行う存在ですが、デビルは人間の心の中にあって、我々の心の弱い部分を突いて、我々をたぶらかし、取引をもちかけて、人を堕落させるものです」

 --今後は

 「小説を書き続けたい。ゆっくり時間をとって旅もしたい。南米にあこがれています。去年から始めたんですが、カヌーでの川下りも続けていきたいです」

 ■あらすじ

 文久3年、やくざ者の蓮八は、苦界に沈んだ幼なじみの八穂を救おうと、敵対するやくざの賭場から大金をせしめる。報復として差し向けられたのは、凄腕の殺し屋・夜汐だった。京で新選組の一員となり、身を隠すことにした蓮八だが、ある日、八穂からの文を受けとる。帰ってきてほしい、という想いを読み取った蓮八は、組から脱走し、隊士達からも追われながら、八穂の待つ小仏峠に向かう。が、夢の中で蓮八に語りかけ、折に触れて彼を導くのは、命を狙っているはずの夜汐だった。

 ■東山彰良(ひがしやま・あきら) 1968年、台湾生まれ。福岡県在住。50歳。作家。2002年『タード・オン・ザ・ラン』で、第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。03年、同作を改題した作品で作家デビュー。09年『路傍』で大藪春彦賞、15年『流』で直木賞、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞、17年『僕が殺した人と僕を殺した人』で織田作之助賞・読売文学賞小説賞・渡辺淳一文学賞を、それぞれ受賞。その他の著書に『ブラックライダー』ほか多数。

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