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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】「基本に忠実」衝撃の旨さ 被災後もほとんど変わらない宮城県「浦霞」 (1/2ページ)

★宮城県浦霞(下)

 全国新酒鑑評会で歴代最多の金賞受賞歴を誇り、安定した旨さで「地酒の雄」と称される浦霞(うらかすみ)。昭和20年代から30年代にかけて浦霞の名を高めたのは、南部杜氏の至宝、平野佐五郎だった。

 その後、半世紀以上にわたり浦霞の酒づくりを支えてきたのが、平野佐五郎の甥であり、現代の名工となった平野重一だ。1973(昭和48)年に発売した浦霞の看板商品「浦霞 禅」をつくったのも平野杜氏である。凜とした中に、どこかほのぼのとした彼のたたずまいは、そのまま浦霞の酒を体現しているようだった。

 昨年蔵を訪ねた時は、平野杜氏は既に亡くなり、平野流の技と精神を受け継いだ小野寺邦夫杜氏が蔵を案内してくれた。本社蔵は、東日本大震災で被災している。蔵の中に浸水し、土蔵の壁が崩れ、機械類が故障、一升瓶約3万本分の酒が駄目になったという。

 東北の蔵は、震災を機に蔵を建て替え、新しい機械類を導入するところが多かったと聞くが、浦霞は海水で錆びて使えなくなったホーロータンクをすべてステンレスに変えたくらいで、変わっていなかった。それどころか、被災したもう発売していない古い製麹機を、部品にまで分解して洗浄し、再度組み立てて使っていた。あとは小野寺杜氏に何を聞いても、どこの蔵でもやっている普通のことばかりなので、拍子抜けしたくらいだ。