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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】湘南唯一の酒蔵の新ブランド 神奈川県「天青」 (1/2ページ)

★神奈川県「天青」(上)

 神奈川県茅ヶ崎市に、湘南唯一の酒蔵がある。熊澤酒造だ。蔵元の熊澤茂吉社長は六代目で、酒蔵を継ぐ気はなかったという。ところが、大学卒業後アメリカに留学していたとき、突如廃業話が持ち上がる。なくなると聞くと、惜しくなるのが人情。自分探しの途上でもあり、酒蔵こそ自分にしかできない仕事だと思ってしまった。

 帰国して家業を継いだのは、1995年。バブル崩壊後で景気は最悪だった。つくっていた酒は、地元にしか出回っていない安い三増酒のみという惨状。酒蔵を立て直すには、全国で売れる新ブランドを作らなければならない。

 まず、長年勤めていた杜氏に引退してもらい、地元の若いメンバーを社員として採用した。しかし、彼らがまともな酒をつくれるようになるのに、最低でも5年はかかるだろう。2000年に新ブランドをリリースするという目標を立てたものの、さて、5年間食いつながなければならない。

 ちょうどこの時、酒業界は地ビール元年で、誰でもビール事業に参入できる環境だった。ここに目をつけた熊澤社長は、さっそくドイツに飛び、現地のブルワーをスカウト。ドイツ製の釜を買い、技術指導を受けながら、「湘南ビール」という地ビールを立ち上げた。同時に酒蔵の敷地内にブルワリーパブを作った。流通ルートがなかったので、直営で消費する場所が必要だったからだ。

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