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【黒田尚嗣 世界遺産旅行講座】地元民を守る岩礁のマリア教会 オスマントルコのイスラム勢力に対する防波堤の役割も ヨーロッパ最南部・フィヨルド「コトルの自然と歴史地域」 (1/2ページ)

 前回は「海上の宮殿」とも呼ばれる厳島神社をご紹介しましたが、「海上の教会」と言えば、旧ユーゴスラビア連邦の一員であったモンテネグロのコトル湾に浮かぶ「岩礁のマリア教会」を思い出します。

 コトルは2000年以上の歴史をもつアドリア海に面した町で、地中海では珍しいフィヨルド地形をなすコトル湾の奥に位置しています。

 そのため、大型船も停泊できる天然の良港であり、複雑な海岸線と険しい山々に囲まれた堅固な要塞でもあります。旧市街の背後の丘から見ると、まるで北欧にあるガイランゲルフィヨルドに来たような感じがします。

 「岩礁のマリア教会」は、コトル湾に浮かぶ島の上に建つ海上の教会ですが、これはかつてこの島の岩礁に聖母マリア像が流れ着き、地元の船乗りがこのマリア像を祀(まつ)るために建てたものです。

 地元の人々は長い航海の安全を祈願するためにこの教会を訪れ、無事に戻ると感謝を込めて銀のプレートを寄進しました。そして彼らは交易先のヴェネツィアから持ち帰ったステンドグラスで教会の窓を飾ったのです。

 趣のある石畳の路地が走る旧市街には、彼ら船乗りの交易による富で築かれた豪華な館や美しい教会が立ち並んでいますが、コトルはローマ・カトリック文化圏とギリシャ(セルビア)正教文化圏の境界にあるためか、街には両方の教会が建っています。

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