記事詳細

【BOOK】戦後廃れた「詠む文化」…日本の象徴を甦らせたい 田中章義さん『辞世のうた』 (2/2ページ)

 --戦国武将から幕末の志士、文人歌人など58人ものうたが並びましたね

 「日本人は1000年以上にわたり辞世のうたを詠むという文化の中で生きてきました。ところがなぜか、第二次世界大戦後、辞世のうたを詠む文化が一気に廃れてしまった。今や短歌や俳句は一部の人を除いては、教科書の中でしか触れられないものとなったんです。リズム感の良さ、また凝縮された文章の行間までをも読みとる世界で唯一無二の素晴らしい文化なのに、残念なことです」

 --復活の道は

 「辞世のうただけでなく、古来大事にされた短歌など和歌に代表される定型詩伝統、歌道ともいうべきものをよみがえらせたい。実は今、和歌の世界文化遺産登録の動きが加速しているところです。文化庁も登録候補として取り上げています。理由として、和歌は日本固有の詩型であり、国歌君が代もそれを踏襲していること、宮中の正月の行事を締めくくる歌会始で和歌が詠まれること、など日本の文化を象徴するものであることが挙げられています。私たちも生活の要所でうたを詠む習慣を取り戻し、希有な文化の担い手であることをさらに認識していきたいものです」

 ■あらすじ

 天下人豊臣秀吉は「露と落ち露と消えにし我が身かな難波の事も夢のまた夢(露のように消えゆくこの身、栄華の日々も夢のよう)」と我が身を憂えた。「人魂で行く気散(きさん)じや夏野原(これから魂だけになって夏の野原へと気晴らしにでかけるとするか)」とユーモアたっぷりの句を残したのは葛飾北斎。戦国武将から幕末の志士、文人歌人の辞世のうたを網羅した58の詩歌とその解説書である。うたとしてだけでなく、歴史上の人物の新たな一面を知る新史料ともなっている。

 ■田中章義(たなか・あきよし) 歌人、作家。1970年、静岡県生まれ。48歳。慶応大学総合政策学部卒。大学1年のとき、第36回角川短歌賞を受賞し、歌人デビュー。在学中から多くの雑誌に執筆。卒業後は世界各地を旅し歌を詠むかたわら紀行文なども執筆。作詞家でもあり、さまざまな国連機関の人々が集結した国連WAFUNIF(ワフニフ)の元親善大使でもある。現在、国学院大学兼任講師。『天地のたから』『世界で1000年生きている言葉』『日本史を動かした歌』など著書多数。本作は夕刊フジに2013年5月~14年10月まで連載した「辞世のうた」を中心に収録した。

関連ニュース