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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】「海外向け」より万国共通の美味さ! 山口県「獺祭」 (1/2ページ)

★山口県「獺祭」(上)

 灘・伏見のナショナルブランドを除けば、今、日本で一番売れている地酒は「獺祭(だっさい)」と言って間違いないだろう。

 獺祭は、旭酒造(山口県岩国市)の会長である桜井博志さんが、30年前に、ゼロからつくりあげたブランドだ。当時は廃業寸前で杜氏まで逃げ出した蔵。そこで一縷(いちる)の望みを託したのが、業界で公開されていた大吟醸のレシピだった。だから今でも、獺祭には山田錦の純米大吟醸しかない。

 桜井会長は「いや、うちはそれしかつくれないんです」と謙遜するが、いろいろな酒をつくり分けなければならない蔵より、こと純米大吟醸に関しては、はるかに経験値が高い。獺祭が多種多様な酒づくりに手を出さないのは、したたかな戦略でもあるのだ。

 2016年から社長になった長男の桜井一宏さんは、03年に蔵へ戻ってからは、ずっと海外戦略を任されていた。初めはニューヨークで、酒を卸している会社と一緒にレストランの営業に回ったが、すぐにこれでは売れないと気づく。それからは、獺祭が売れている数少ない店に集中し、そこを突破口に販売先を広める作戦に出た。

 「そのうち、ニューヨーカーで獺祭ファンの、自称営業部長という人が何人もできて。結局彼らが獺祭を広めてくれたのです。お客さんは正直で、美味しさは万国共通。だからうちは、あえて海外向けの酒などつくりません。今より美味い獺祭をつくる。それだけです」

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