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【BOOK】「安倍晴明と源博雅のコンビはホームズと寅さん」 夢枕獏さん『陰陽師 女蛇ノ巻』 (1/3ページ)

★夢枕獏さん『陰陽師 女蛇(めのへび)ノ巻』文藝春秋(1450円+税)

 平安時代の陰陽師・安倍晴明(せいめい)と、心やさしき笛の名手・源博雅が活躍する人気短編伝奇シリーズの最新刊。昭和63(1988)年に刊行されたシリーズ第1巻『陰陽師(おんみょうじ)』から数えて16弾目の単行本だ。30年を経て累計600万部を超える人気の秘密と、長寿作品としての思い入れなどを聞いた。(文・たからしげる 写真・佐藤徳昭)

 --陰陽師をテーマに物語にされたいきさつは

 「中学生か高校生のころに『今昔物語』を読みました。その中に安倍晴明という人物がいたんです。小説を書き始めたとき、いつか晴明のことを書いてやろうと思ったんですね。最初はメルヘンを、次に伝奇バイオレンスを、その後に書いたのが、宮沢賢治に題材をとったものと、この陰陽師でした。30代のときです。長い話ばかり書いていた僕が、一話完結形式で書き始めたものです。最初は、これだけ長く、多くの短編が書けるとは思ってもいませんでした」

 --夢枕さんにとって陰陽師とは

 「今も、僕が出す本の中では一番の売れ筋です。ありがたいことです。陰陽師があるので、今の僕の立ち位置もあるんじゃないかと思っています。その後、歌舞伎の台本を書くことにもつながりました。メルヘンや伝奇バイオレンスだけやっていたら、今この場所には立っていなかったでしょう」

 --これほどの人気が続いているのは

 「時代の風を受けたという気がします。30年前ですが少女小説が脚光を浴びて、平安時代を舞台にしたものがすごく売れました。女の子が好きな占いと、僕の伝奇バイオレンスとの接点が陰陽師だったんです。晴明と博雅のコンビも受け入れられました。3回目を書いているときに、これはシャーロック・ホームズとフーテンの寅さんだと気がつき、意識するようになりました。ホームズの世界観と、毎回同じパターンでいくのを恐れない寅さんの持つ心地よさですね」

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