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【ドクター和のニッポン臨終図巻】女優・京マチ子さん 生涯独身も…仲間と一緒に過ごした“幸せな老後” (1/2ページ)

 肉感的である、という日本語の表現。この女優さんを知ったときに覚えた記憶があります。

 昨今はエロいという表現をよく見かけますが、どうも安っぽくて、好きじゃありません。この人から滲み出るまろやかでしっとりとした色気は、「エロい」ではなく「肉感的」がやはり相応しかった。

 女優の京マチ子さんが5月12日、都内の病院で亡くなりました。享年95。死因は心不全ですが、穏やかに天寿をまっとうされた老衰でしょう。

 京さんが生まれたのは大正13年。昭和天皇が結婚された年です。大正、昭和、平成、令和と4つの時代を跨(また)いで生きたのはすごい。

 若い読者の方は、この女優さんのことをご存じないかもしれません。今でこそ、日本映画が海外の映画祭で賞を獲得することは珍しくありませんが、京さんは、その道を開いてくれたお一人です。

 1950年代に出演した黒澤明監督『羅生門』は、ベネチア映画祭グランプリ、溝口健二監督『雨月物語』は同銀獅子賞、衣笠貞之助監督『地獄門』ではカンヌ映画祭グランプリを獲得。「グランプリ女優」といわれるほどの活躍でした。また、小説家の谷崎潤一郎も京さんの崇拝者であったようで、『痴人の愛』ほか谷崎作品の映画にも出演されていました。

 谷崎は京さんに初めて会ったときに、「美しい国の美しい人」と呟いたという逸話もあります。

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