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【BOOK】「科学とは知識ではなく、五感で自然に向き合う力」 科学と文学を融合 池澤夏樹さん『科学する心』 (1/3ページ)

★池澤夏樹さん『科学する心』集英社インターナショナル(1800円+税)

 硬質かつ美しい文体で語られる、この世を成り立たせているものの数々。生き物、宇宙、原子力とテーマは多岐にわたり、科学ファンはもとよりそうでなくても、読み終えるのがもったいないと思わせてくれる1冊だ。(文・冨安京子 写真・寺河内美奈)

 --最初に“裕仁氏”の意外な一面が紹介されます

 「昭和天皇のことですが、天皇であることと科学者であることとは別の資質だし、僕は科学者としての昭和天皇を書こうと思って、いささか不謹慎ながら敬愛の情を込めてそう呼ばせていただいた。皇族には姓がないから収まりが悪いですが、よく知られているように、裕仁氏は幼い頃から生物に尋常ならざる興味を持たれ皇居内に生物学御研究室をつくり、海洋生物の研究に没頭された。とりわけヒドロゾアというクラゲの仲間の研究では1万3000点以上の標本を作成され、この分野の第一人者でした。敗戦、人間宣言、東京裁判を経て象徴としての身分が定まっていく激動の時代の中、激務をこなしながら、それが終わると嬉々として研究室に駆け込まれたのではないか。微笑ましい気持ちにもなります」

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