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【BOOK】6年ぶりの新作…「雑なもので高い評価を受けてしまうのが何より怖い」 横山秀夫さん『ノースライト』 (2/3ページ)

 --それが、長期間売れ続けている。待たされた分だけファンには飢餓感が強かったのでは

 「たまたまですよ。戦略でも何でもありません。私もデビュー当初は“量産作家”でしたからね(苦笑)。書けないときはどうやっても書けないし、不完全なものは絶対に出したくないという思いが強い。万が一、雑なものを出して、高い評価を受けてしまうことが何よりも怖いからです。子供のころから仕事をしてお金をいただく行為は『聖なるもの』という思いがありましたしね」

 --主人公はバブル崩壊で落ちぶれた“敗残兵”

 「人生には、いろんなことが起こるし、川の流れでいえば『よどむ』ような停滞の時期もあるでしょう。そこから何かをきっかけにして再起する物語を書きたいと思った。周りがいくら『アイツは落ちぶれた』と思っていたり、見かけがそうであっても、本人は『まだまだ終わっていない』という思いでいる。そんな気持ちが残っていると私は信じたいのです」

 --『ノースライト』が再起の象徴でしょうか

 「暗闇の中に差す光。それも、北向きの窓からの穏やかで弱い光です。苦境で心が弱っていて、そこから立ち直ろうとしている人間に、南や東からの光は、ちょっとまぶしすぎますから」

 --最も美しいナゾ、熱く心揺さぶる結末…という触れ込みです

 「あくまで『横山ミステリー史上』というただし書きがついていますから、規模はちっちゃいですよ。でもね、書き進めてゆくうちに、『小さな奇跡』があってもいいんじゃないか、と思うようになったのです。思いがけないことが起こるのが人生ですから、思いがけない結末があってもいい。そう信じたいというのかな」

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