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【BOOK】昭和の東京五輪にあって令和の東京五輪にないもの 「史実」と「虚実」を織り交ぜて描いた衝撃物語 月村了衛さん「悪の五輪」 (3/3ページ)

 --来年の東京五輪にもつながってゆく問題

 「五輪が莫大(ばくだい)な利権の場であることには変わりがない。規模は前回と比べものにならないほど巨大になっているから、今回も、ドロドロしたことがあったはずです」

 「ただ、本作を書いたのは前回と今回との違いを浮き彫りにする狙いもあった。昭和の五輪には、敗戦からの完全な復興、アジア初の五輪に向けて、国民が一丸になったという“前向き”の空気があったように思います。それが、来年の東京五輪には、感じられないでしょ。国民の生活は苦しくなるばかり。それなのに一部の権力者は自分の利権や名誉のために動いている…。時代認識ができない人がいるということですよ」

 ■あらすじ 昭和の東京五輪の前年、公式記録映画の監督に決まった黒澤明が突如、降板する。その後任監督の選任をめぐって、映画好きのヤクザ人見は、組の親分から「錦田」という男を押し込む工作を命じられる。巨匠・黒澤に比べて、知名度も力量も劣る錦田は、トップ女優との不倫問題も抱えていた。人見は次第に、映画界やスポーツ界のみならず、政財界、ヤクザ、右翼など、さまざまな闇の勢力の暗闘に巻き込まれてゆく。

 ■月村了衛(つきむら・りょうえ) 1963年大阪府生まれ。55歳。早稲田大学第一文学部卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で大藪春彦賞、『土漠の花』で日本推理作家協会賞をそれぞれ受賞。他に、公安警察官の視点から昭和史を描いた『東京輪舞』などがある。

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