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【ぴいぷる】この先もずっと「書きたい好奇心」 認知症の母を介護、自らは乳がん手術後の朗報 吉川英治文学賞受賞・篠田節子 (1/3ページ)

 スレンダーな体形。いかにも軽やかに作家人生を送ってきたかのように見えるが、さにあらず。その歩みは努力、研鑽のたまものでもある。

 「デビューしちゃったら走り続けて、気がついたら30年ですねぇ」

 走り続けて今年、『鏡の背面』(集英社)で、主にエンタメ小説、歴史小説など大衆小説のベテランに贈られる吉川英治文学賞を受賞した。

 文壇での栄達の一方、作家とて人の子、親はいるし病気にもなる。20年前から認知症の母の介護に追われ、外出もままならない日々。昨年3月には自らに乳がんが見つかり、切除手術を受けた。

 仕事と自らの予後への対処、母親の介護対策と多忙を極めるなか、飛び込んできた朗報だった。

 「最初、何かの候補に残ったのかと思ったら受賞なので、耳を疑いました」

 吉川英治文学賞はいきなり受賞者本人への通知となる。

 「しかも急に決まった母の介護施設への入居日と、賞の記者会見が同じ日(3月上旬)だったんですよ。その日、どう動けばいいのって(笑)」

 そんな風に慌てふためいていたとき、食事の支度ができた…と連絡が入った。マンション上階の仕事場から階下の自宅に戻ると、テーブルにシャンパンが。26歳から連れ添い、生活面のサポートもしてくれている4歳年上の夫の気遣いだった。

 「何かいいことがあったら開けようねと、取っておいたシャンパンを出してきてくれました。人心地着いて酔っ払っちゃったのですが、お世話になった編集者の方に片っ端から電話をかけて報告しました」