記事詳細

【がん治療最前線】“薬剤の患部配達”阻む壁を打ち破る! がん細胞を狙い撃つ新たな治療法 (1/2ページ)

★(4)

 進行がんは依然として治療困難なことが多い。その壁を打破する新たな治療法として、がんのドラッグ・デリバリー・システム(DDS)を利用した「抗体薬物複合体(ADC)」の開発が進んでいる。簡単に言ってしまえば、がんに集積しやすい高分子蛋白(たんぱく)である免疫グロブリンG(IgG/抗体の一種)に抗がん剤などの薬をつけ、がんに直接届けて効果を高める方法だ。

 「通常、血液中に存在するIgGは、正常な血管から外に漏れることはありません。がんの未熟な血管からは漏れて、がんにIgGが集積するのです。これをEPR効果といいます。抗がん剤をつけた抗体は、さらにがん細胞に効率的に結合するため、既存の抗がん剤でも効果を上げることが期待できるのです」

 こう話すのは、国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野の松村保広分野長。EPR効果によるDDSの生みの親であり、新たな研究を進める一方、日本DDS学会の理事長を務めるなどDDS技術の発展にも尽力。また、これまでのDDSの仕事を本にまとめ、国際的な学術出版社「シュプリンガー(Springer)」から年内に出版する予定だ。

 「約20年前、胃がんに対する新たな抗体付加DDS製剤のマウスの研究で、抗腫瘍効果が非常に高いことがわかりました。この薬なら、がんを死滅させることができ、がんを克服できると思ったのですが、そう簡単なものではありませんでした」

 人間で行った胃がんの臨床試験では、思うような効果が得られなかったのだ。松村氏の研究に大きな壁が立ちはだかった。理由は何か。EPR効果とDDSシステムは、決して間違っていない。ADCの作り方にも問題はない。実は人間のがんには、DDSを阻む大きな特性が隠されていた。

関連ニュース