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【黒田尚嗣 世界遺産旅行講座】スペインの基礎をつくったアラゴン王国の古都 サラゴサの「ムデハル様式の建築物」とピラール祭

 スペインの歴史を語る上で、欠かせないのがイスラム教徒による支配、そしてキリスト教徒によるレコンキスタと呼ばれる国土再征服です。カスティリア女王イサベルとアラゴン王フェルナンド2世の結婚により、統一スペイン王国が誕生し、1492年、グラナダのナスル朝が滅ぼされてレコンキスタは完了しました。

 そこで、今回はカスティリア王国とともにスペインの基礎を作ったアラゴン王国の古都サラゴサの世界遺産をご紹介します。

 サラゴサといえば日本の香川真司選手が、地元サッカーチームのレアル・サラゴサで活躍していることから、現地でも日本のことが知られつつあります。

 このサラゴサは「イベリア」の語源となったエブロ川が流れ、中世のたたずまいを残す美しい街ですが、スペインにおける聖母マリア信仰の中心地でもあります。

 伝説によると、エブロ川の岸辺にいた聖ヤコブの前に聖母マリアが現れてキリスト信仰の礎となるピラール(柱)を渡したとされ、ピラール聖母教会はこの伝説によるものです。ピラール聖母教会前の広場はピラール広場と呼ばれ、市庁舎やラ・ロンハ(商品取引所)、そして、世界遺産登録されている14世紀のサン・パブロ教会とラ・セオと呼ばれる大聖堂があります。

 サン・パブロ教会はモスクのミナレット(尖塔)を連想させる八角形の鐘楼が印象的なムデハル様式(イスラム教とキリスト教の両様式が融合したデザイン)の建物です。

 ラ・セオとはアラゴンの言葉で「カテドラル」を意味し、正式名称はサン・サルバドール大聖堂と呼びますが、ロマネスクからネオ・クラシックの様式とイスラムのムデハル様式が調和した素晴らしい教会で、教会内部のサン・ペドロ礼拝堂をはじめとする豪華なチャペルは、サラゴサの繁栄を物語っています。

 特に毎年10月上旬から約10日間、開催されるピラール祭では、アラゴン地方の民族舞踊ホタや聖母マリアの聖体行列が行われ、サラゴサの街は活気に満ちて輝きます。

 このサラゴサは「アラゴンのムデハル様式の建築物」としてラ・セオ、サン・パブロ教会、そしてレコンキスタ後に改装されてアラゴン王の居城となったアルハフェリア宮殿が世界遺産に登録されていますが、私はこのピラール祭も世界遺産の価値があると感じました。

 ■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ)慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。

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