記事詳細

【BOOK】「お金は大事なものであり、怖いものでもある」 不仲な兄姉弟間での骨肉の争い描く… 下村敦史さん『絶声(ぜっしょう)』 (1/2ページ)

★作家・下村敦史さん『絶声(ぜっしょう)』(集英社1600円+税)

 江戸川乱歩賞受賞作家にして、読者をあっといわせるどんでん返しでは一目置かれる著者。最新刊が話題を呼んでいる。巨額な遺産相続をめぐり、不仲な兄姉弟間で繰り広げられる骨肉の争いを描き切った。(文・たからしげる 写真・高橋朋彦)

 --新刊の上梓までの経緯は

 「雑誌『小説すばる』の2018年4月号から12月号まで連載したものを、大幅に加筆修正して単行本にしました。連載の依頼があったとき、何がきっかけだったかは覚えていないのですが、最初にトリックがひらめきました。そのトリックを生かすために、物語を考えていきました。これまでは、そうした本格推理のような書き方をしたことがありません。大幅な加筆修正ですが、具体的には新たな登場人物を加えるなどして、全体の4割くらいの書き直しが必要でした」

 --読みどころは、登場人物の全員が悪人という点

 「これまで書いてきた小説は、割と常識やモラルに縛られて行動する登場人物が多かったんです。今回の登場人物は性悪説ではありませんが、巨額な遺産相続をめぐってモラルに縛られずに動き回る人間たちです。これまでの作品でも、物語としての悪役というのは何人も書いてきましたが、ダークヒーロー的な主人公を描くのは楽しい作業でした」

 --お金に対する人間の欲望が存分に描かれています

 「金銭がからむと事件が起きます。たとえば有名人にファンが、それこそ1万円、2万円といった額をプレゼントというか貢ぐような形で渡した場合、もらう方もある意味恐怖を感じるのではないか。ファンを裏切るようなことをすれば、恨みが一層強くなるでしょうし。ですから、小説の場合も、同じように本を買った読者には、値段分だけは楽しんでもらいたい。それが読者と書き手の関係としては健全なのではないかと思います」

 --しかし、お金で人の心は買えない、とよく言われますが

 「お金があるとできることって本当に多いですし、お金はあるにこしたことはないんですけど、それが価値観になってしまうと、人間関係でも何でも間違えるんじゃないかと思います。お金は大事なものですが、怖いものでもありますから」

関連ニュース