記事詳細

【パリッコの「酒飲み12カ月」】寒くなるのが待ちきれない? “外チキラー”の午後

 以前この連載で、僕は勝手に自分の中で、5月から10月までを「夏」と定義していると書いた。現在、10月の末。とにもかくにも、気候が良すぎる。朝、ちょっと肌寒いかな?と思ってTシャツの上にカーディガンなど羽織って外に出ても、ポカポカとした陽光を浴びているとすぐに暑いくらいになってくる。なので、半袖になる。するともう、その場に存在しているだけでぐわーっと多幸感が押しよせてくる。たまらない季節だ。正直、1分1秒でも長く外にいたい。仕事場で原稿を書いていても、もったいないもったいないと、いてもたってもいられなくなる。しかしありがたいことに、やることは山のようにある。

 よし、少しだけ休憩をとって、ほんのつかのまの現実逃避に出かけよう。

 僕は、日常の中における非日常感を常に大切にしたいタイプだ。大げさなことでなくていい。例えば、都内にある公園は基本的に火気厳禁の場所ばかりだが、ルールの範囲内でどうにかやりくりし、デイキャンプ気分を味わうことはできないか?

 前回はベランダひとり鍋。似たようなことばかりしているともいえるが、熱々のチキンラーメンをつまみにハイボールを1杯だけ飲むなんてのはどうだ。いや、どうもこうも、実現すれば最高に決まっている。頭の中で算段をつける。あれここうして、これをああすれば、うん、いけるはず。

 キッチンで湯を沸かす。真空断熱水筒に注ぐ。それと、サーモスの保冷缶ホルダー、百均で買ったステンレスのコッヘル風容器も合わせてカバンに入れる。

 コンビニへ行き、ハイボール1本と、チキンラーメンとソーセージを1袋ずつ買う。もうおわかりですね? 火にかけるのではなく、家から持っていった熱湯で、チキンラーメンを作ってしまおうというわけです。

 ついでに温泉玉子もひとつ買う。チキンラーメンにはどうしたって玉子が不可欠だが、熱湯調理では火の通りに不安が残る。その解決策として導入。

 近所の石神井公園にやってきた。散歩の人々や子供たちでにぎわうエリアの隙間、あまり人のいないスポットにあるテーブルに陣取る。ひとまず、保冷缶ホルダーにセットしたハイボールをぐいと一口。見上げれば青空はどこまでも高く、木々はまだまだ生命力に満ちた緑色をたたえている。あぁ、多幸感ここに極まれり。

 百均のコッヘル風容器。「風」というのは、商品説明に「直火禁止」とあったので、実際にキャンプなどで調理に使えるものではないからだけど、こういうときに雰囲気を味わうのには十分なので重宝している。おかげで気分は完全にキャンプだ。若干小さめなので、チキンラーメンを粗く割りながら入れてゆく。ソーセージ(念のため裏面に「加熱食肉製品」と記載されていて、生で食べても問題ないものを選んだ)も3本入れる。熱湯を注ぎ温泉玉子を落とす。わざと袋に多めに残しておいた素のチキンラーメンを、ポリポリとつまみにしながら待つ。

 3分後、実際このやりかたでうまくいくか不安だったラーメンは、なんの問題もなく完成していた。麺をひとすすりしてみると、おぉ、熱々! ソーセージも、あったまり具合が若干若いがぜんぜんいける。

 無心で麺をすすり、ハイボールを挟む。独特の、粉っぽい、油っぽい、しょっぱい麺。お湯が少なかったからか全体がグズグズしてるけど、それがむしろつまみ向きでいい。温泉玉子の黄身と絡んだ麺など、この上ないごちそうだ。

 さっきから自分の周りで、何やらポトポトポトポトと威勢のいい音がすると思ったら、どんぐりたちの落ちる音だった。これからあっという間に寒くなるんだろうなぁ。いっそう外チキラーがうまくなるぞ。

■パリッコ 酒場ライター。著書に『酒場っ子』『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』、スズキナオ氏との共著に『酒の穴』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』。「晩酌ほろ酔いクッキング」(漫画ゴラク)「今日は早退します!」(東京ウォーカー)他、連載も多数。TV東京「音流~ONRYU~ 酒場サーキット」出演中。

関連ニュース