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【ドクター和のニッポン臨終図巻】今いる場所から逃げてみたら… 漫画家・吾妻ひでおさん (1/2ページ)

 先週木曜日、渋谷のラブホテル街で映画監督の高橋伴明さんとトークショーを行いました。私が原作と医療監修を務め、伴明監督がメガホンを取られた『痛くない死に方』(来夏公開)の完成記念イベントでした。

 伴明作品の名作ピンク映画『襲(や)られた女』も上映しました。露骨すぎる今のAVよりもコミカルでほんわかした38年前のエロに思いがけずそそられたのは歳のせいでしょうか。漫画家でいえば、この人がその筆頭に挙がるかもしれません。

 吾妻ひでおさんが10月13日に都内の病院で亡くなりました。享年69。死因は食道がんとのこと。

 吾妻さんがTwitterで食道がんを公表したのは2017年春のこと。「胃を釣り上げて食道にする手術だったので今胃がありません、なので物が食べられない。15kg痩せました」(原文まま)と書いています。

 食道がんは手術可能と判断されたなら胸部の食道とリンパ節を切除し、胃を引き上げ残った食道の断端(だんたん)と繋ぎ、新しい通り道を造る手術を行います。術後は嚥下(えんげ)障害や、吐き気や動悸(どうき)を催すダンピング症候群が起こるため、おのずと食が細くなります。しかしながら、吾妻さんは術後、自宅で仕事を続けられ、比較的穏やかな闘病生活を2年ほど過ごされたようです。

 吾妻さんの生き方で特筆すべきは、アルコール依存症を見事克服されたこと。人気漫画家となった後、多忙ゆえに創作が辛くなり、寝る時以外は酒を手放せなくなったそうです。それに伴い奇行や自殺未遂を繰り返し、家族によって強制入院させられました。

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