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【松浦達也 肉道場入門!】どんぶりメシでかっ込みたい! 千駄木「腰塚」のコンビーフ

★絶品必食編

 「コンビーフ」と聞いて、想像するイメージは、高級品か、それとも庶民の味か。

 どちらも正解だし、ある意味ではどちらも不正解だ。コンビーフに対するイメージは世代ごとに差がある。

 まず戦後間もない頃から、高度成長期までの品を知る人はすべてのコンビーフが高級品だった世代だ。

 次にバブル以降、現在まで続くリーズナブルな加工肉のイメージがあるなら、広く普及する馬肉入りの缶詰世代。

 ちなみに現在では馬肉入りは「コンビーフ」とは名乗れず、「コンミート」などの名称となっている。

 そしてもうひとつが、牛肉100%の少し高級なアイテムのイメージだ。

 2000年頃から、仕入れに強く、加工肉を作る技術を持つ精肉店が、独自のコンビーフを作るようになった。

 なかでも広く知られるのが、東京・千駄木「腰塚(こしづか)」のコンビーフだ。

 サイズはドーンと400グラム。濃厚な味わいの肩バラ肉を塩漬けにして、茹でたものを手でほぐし、国産牛の牛脂と和えて、パウンドケーキのような型に詰める。

 型から切り出した一切れをどんぶりメシの天に鎮座させ、ごはんの熱でコンビーフの脂を溶かしていく。てらてらと光る脂にほのかな塩気と旨みが香る。

 そこに醤油をひと垂らし。次に、わさびや、和がらしを丼の縁にちょんとつける。

 箸でならせば、手ほぐしならではの長い肉の繊維が銀シャリの上で、しとやかにほぐれていく。その繊維で米を巻くように持ち上げて、口へ運ぶ…のが、待ちきれなければかっこんでもいい。

 噛みしめるほどに、甘い米の味わいのまわりに、肉の味がしみ出してくる。

 2杯目に突入するなら、卵の卵黄を落とす、長ねぎのみじん切りを散らすなど調味のバリエーションは無限。

 最近では本店以外にもJR日暮里駅構内など都内数カ所に出店し、コンビーフはもとより店舗によってはコンビーフを具にしたサンドイッチなども買い求めることができる。

 今秋には、吉祥寺で飲食業態も出店した千駄木・腰塚。

 ああ、こんな原稿を書いたら、また食べたくなってきた。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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